“消えゆく地元なじみの飲食店”後継ぎがいない高齢店主に救世主…常連客「この味を残したい。継がせてくれ」の急展開【弁護士が解説】
高齢化を理由に飲食店が閉店してしまうケースが相次いでいます。子どもがいても後を継がない選択がされる時代です。そのようななかで、その土地、人々に慣れ親しんだ飲食店がなくならないように、常連客が後を継ぐ場合もあります。そこで、 ココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」 によせられた質問をもとに、飲食店の第三者への事業承継について、松尾裕介弁護士が詳しく解説します。 都道府県「重要犯罪認知件数/増減率」「検挙率/増減率」ランキング
もう限界…お店はもってあと2~3年
相談者のももちゃんさんは、従業員数名の飲食店を経営しています。長年地元に愛され、常連客も多いものの、体力の限界からあと2~3年でお店を閉めようと思っていました。後を継ぐ息子や娘はいません。 そのようななか、常連客の1人が「この味を残していきたいから後を継ぎたい」と言ってきました。長年通うお客で、人柄やプライベートのことなど、なんでも話してきた間柄です。安心して任せられるとは思っているものの、いざ継がせようとなるとなにをすべきかわかりません。 そこで、ココナラ法律相談「法律Q&A」に次の2点について相談しました。 (1)法的トラブルなくスムーズに引き継ぐにあたって、いまからすべきことはなんでしょうか? (2)ほかの従業員や取引先への対応で、注意すべき点はありますでしょうか?
(1)スムーズに引き継ぐためにいまからすべきこと
法律の専門家や事業承継(M&A)サポート機関への相談 「引き継ぎ」というと、なんだか簡単にできそうですが、実際のところ「引き継ぎ」、すなわち、飲食店の「事業承継」のためには、さまざまな検討すべき事項があります。 たとえば、飲食店などの中小企業における事業承継は、事業承継の手法(親族内承継、従業員承継、第三者承継(M&A))の選択、後継者の選定、事業承継における法的手続(株式譲渡、事業譲渡など)、事業承継契約書の内容の確定、事業承継に関する税制、事業承継補助金や事業承継支援融資の活用などの多方面における、非常に専門的な知識が欠かせません。 そのため、事業承継をスムーズに引き継ぐにあたっては、法律の専門家や事業承継(M&A)サポート機関への相談が欠かせません。経験豊富な専門家からのサポートを受けることにより、事業の譲渡側及び譲受側がスムーズに事業承継に着手でき、安心して事業承継を実施でき、また、一般に、事業承継の成功の可能性も高まると考えられます。 1人で考えても、なかなか結論が出るものではありませんので、まずは、法律の専門家や事業承継(M&A)サポート機関などに気軽にご相談されることを強くお勧めします。 事業の現状把握、株式・資産の整理 事業承継のためには、事業の現状把握が大切です。株式の保有者が誰か、事業用の不動産や資産がどれだけあるか、第三者の名義になっていないかなどを把握することが肝要です。 会社形態の場合には、株式の把握が非常に重要です。特に、株式が分散していたり、 一部の株主が所在不明であったりすると、事業承継の重大な障害となるおそれがあります。また、飲食店など家族経営の場合には、譲渡側の財産と経営者の個人財産が明確に分離されていないケースも少なくなく、明確に区別して財産を整理する必要があります。 後継者の選定 常連客がお店の後を継ぐことを希望しているとのことですが、事業の継続のためには、常連客の意思が強固なものであるのか、実務への理解や経営能力の有無など後継者として相応しいかなどの確認、検証も必要と考えられます。 また、親族や従業員に後継者候補がいないことを確認しておくことも肝要です。具体的には、子どもや兄弟など身近な親族が承継する意思がなく、親族以外に事業承継されることの確認、了承を取っておくこと、従業員に後継者候補がいないことを確認することが、事業の継続や後々の紛争回避には重要であると考えられます。