書店員芸人・カモシダせぶんが小説家デビュー 元ネタになった「濱口優のもとで創作したコント」
"書店員芸人"として活躍中のカモシダせぶんさんが、このほど『探偵はパシられる』で小説家としてデビューされた。番長のパシリとして奔走する高校生の主人公が、探偵さながらの名推理を展開するこの連作ミステリーは、かつて、濱口優さんのもとで創作したコントが元ネタになっているのだそう。カモシダさんのデビューを記念して、おふたりに当時の思い出を語り合っていただいた。 【この記事の画像を見る】 ※本稿は、『文蔵』2024年10月号の内容を一部抜粋・編集したものです。
おもろいヤツにはおもろい事件が起こる
――おふたりは同じ事務所の先輩後輩という関係になりますが、日頃から親しい間柄なのでしょうか。 【カモシダ】親しいなんて恐れ多くてとんでもないです! 僕から見れば濱口さんは雲の上の存在ですから。ただ、今から十年くらい前に濱口さんが「はまぐちコントサークル」という若手とユニットコントするライブをされていて、そこに若手が大勢集まっていたんです。僕もその一人でした。 【濱口】まだ新宿角座があった頃やね。新しい劇場ができるというので、せっかくだから何かやろうよと周囲に声をかけたら、40人くらい集まったのを覚えてる。 【カモシダ】松竹の芸人なら誰でもネタ(コント)を応募していいシステムだったので、まさしくサークルみたいな雰囲気でしたよね。 ――カモシダさんもそこでせっせとコント作りに励んでいた、と。 【カモシダ】そうですね。というか、若手がみんなこぞってネタを提出していて、それを濱口さんや(松竹芸能の)社員の人が精査して、良さそうなものを集めて「ちょっと稽古してみようか」とやっていた感じです。 【濱口】ああ、そうやったね。一人一本とはかぎらないから、毎回80本くらいのネタに目を通してた気がする。そこから30本くらいに絞って、リハをやってさらに選抜していくんよな。 【カモシダ】重労働だったと思いますけど、僕からすると芸人仲間と一緒にやれる楽しさがありました。何より、濱口さんがいつも温かい空気を作ってくれるのでありがたかったですね。 ――カモシダさんが「はまぐちコントサークル」への参加を決意したきっかけは何だったのでしょう? 【カモシダ】そもそも僕はめちゃイケ世代なので、濱口さんと何かご一緒できるのであれば、飛びつかない手はなかったんですよ。タイミング的にもコンビを解散した直後で、これからピンで何ができるかなと悩んでいた時期でしたから、集団コントの中で自分の色が見つかればいいなと思っていました。 【濱口】そういえば、その頃からもうパシリのネタをやってたよな(笑)。 【カモシダ】そうなんですよ! 最初に提出した台本が、まさにパシリネタでした。というか僕、学生時代は本当にパシリでしたからね。 【濱口】実話やったんや(笑)。俺の中でもあのへんから、「カモシダ=パシリ」という認識が生まれてるからね。あと、家が燃えたエピソードもあるか。 ――それは何ですか? 【カモシダ】僕、火事で家が全焼したことがあるんです。それもまったく火の気のないところに、窓から射し込んだ日光が鏡に反射して発火する、収斂火災というすごく特殊な原因で......。 【濱口】要は虫眼鏡みたいなことやろ? この話を初めて聞いた時、そんなこと本当にあんねんなってすごくびっくりしたけど、「とりあえずお前は無事なんやな?」「じゃあ笑っていいんやな?」って確認したのを覚えてる。 【カモシダ】おまけに家の修繕費が全部で770万円かかったのに、保険が768万円しかおりなかった。僕、2万円赤字になってるんですよ(笑)。 【濱口】いやあ、何度聞いても笑ってしまうわ(笑)。やっぱおもろいヤツにおもろい事件が起こるもんなんやな。