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環境への配慮やコスパのよさから、特に若者世代の間で中古品に対する人気が高まっている。その市場規模は2024年に33兆円に達し、多くの大手企業やスタートアップも中古品ビジネスに注目するが、大きな利益を得るのはなかなか難しいようだ。英経済紙「フィナンシャル・タイムズ」が、既存のリサイクルショップと新規参入組がしのぎを削る中古品ビジネスの最前線を追った。 【画像】世界で盛り上がる「中古品ビジネス」は実際のところ儲かるのか？　イケア、レゴ…大手も続々参入 ファストファッションブランドのSHEINやZARA、H&Mから、家具大手イケアや玩具メーカーのレゴまで、中古品ビジネス市場に大手企業が次々と参入している。 同市場ではすでにリトアニアのVinted（ヴィンテッド） 、英Depop（ディポップ）、米ThredUP（スレッドアップ）といったスタートアップが競合する。 ベラ・ハディッド、リアーナ、サラ・ジェシカ・パーカーといったセレブたちも中古品を愛用していることを公表し、英国の人気恋愛リアリティ番組『ラブ・アイランド』も出演者の衣装に古着を使うようになった。 いまや「preloved（大事にされてきた）」とも呼ばれる中古品の需要は急激に伸びており、各社がそこから新たな商機を掴もうとしているのだ。 世界の中古品ビジネスを取材し、『ゴミ捨て場の惑星と中古品』（未邦訳）を出版したジャーナリストのアダム・ミンターは、昨今の中古品ビジネスブームをこう評する。 「中古品は非常に人気がありますが、関連ビジネスを立ち上げるコストは莫大で、簡単にうまくはいきません」

「新品か」ではなく「製品の真価」が重要

2024年9月、イケアも中古品ビジネス市場に参入した。利用者同士が直接、自社の中古商品を売買できるECサイト「イケア・プレオウンド」を試験的に開設したのだ。 このサイトは個人同士がやりとりできるフリマサイトの米Craigslist（クレイグスリスト）や豪Gumtree（ガムツリー）などの利用者をターゲット層にしており、スペインの首都マドリードとノルウェーの首都オスロで利用できる。グローバル展開されるか否かは、2024年末に決まるという。 イケアの親会社インカグループのジャスパー・ブローディンCEOによれば、同社の商品が中古品市場で占めるシェアは、新品市場よりはるかに高いという。「中古品市場に参入することにより、イケアの製品のなかで何がよく売れているのかを把握できます」と彼は言う。 大手アパレルやメーカーが、中古品ビジネスに興味を持つのは自然なことだ。新品市場より小規模ではあるが、中古品ビジネスはすさまじい速度で成長している。 ThredUP社の調査によれば、グローバルな中古衣料品市場は2021年の1410億ドル（約20兆2700億円）から2024年には2300億ドル（約33兆720億円）に成長し、さらに今後4年以内に3500億ドル（約50兆3270億円）に達するという。これは新品衣料品市場の3倍の成長速度だ。 また、米コンサル企業ベイン・アンド・カンパニーによれば、2017～2023年の新品の高級品の売り上げ成長率は43％にとどまる一方、中古のそれは125%成長した。 中古品は特に若者に人気だ。市場調査会社ユーロモニターの調査によれば、Z世代、ミレニアル世代の40%以上が最低でも1～2ヵ月おきに中古品を購入しているのに対し、同じ頻度で購入するベビーブーマーは20％程だった。 欧州のある企業幹部は、若者世代の価値観を次のように説明する。 「若い世代は、新品かどうかを気にしません。彼らは無駄使いをよしとせず、製品の真価に重きを置きます。中古品ビジネス市場には、投資のチャンスがあります」 だが、中古品ビジネスには懸念も多い。欧米ではこれまで、非営利のチャリティショップやリサイクルショップがこの市場を独占してきた。商品調達の難しさや、偽物の問題もある。後発で市場に参入してきた大手企業やスタートアップは、利益を上げることができるのだろうか？　 より大量の新製品を生産・販売することを目標にしてきた企業のなかには、中古品ビジネスへのモチベーションを見出せない人たちもいる。こうした企業は地球を救うため、中古品ビジネスに参入するのか。それとも自社を成長させるためなのか。 スウェーデンのルンド大学の研究者で、中古衣料品ビジネスに関する著書を持つジェニファー・ヒントンは言う。 「ファストファッションのビジネスはサステナブルではないと、H&MやZARAなどの大手ブランドは危機感を持っています。彼らにとって、中古品ビジネスは自社のイメージアップにつながるという側面があります」