本家はイニエスタ率いる神戸のバルサ化をどう見たか?
たとえばヴィッセルのゴールキックで試合が再開される場面で、宮大樹(23)とダンクレー(27)の両センターバックがゴールに近い位置で、左右に開くことが多かった。 ゴールキーパーの前川黛也(24)からショートパスをつないで、攻撃をビルドアップしていく。宮やダンクレーだけでなく、場合によってはボランチの山口蛍(28)か、あるいは今春までバルセロナに在籍していたセルジ・サンペール(24)が下がってきて中央でパスを受ける。 しかし、そこから先の展開にいま現在のヴィッセルが抱える問題が凝縮されている。バルセロナがかけてくる激しいプレスの前に、最終ラインからのビルドアップが阻まれてパスも雑になる。象徴的なシーンが前半12分に、あわや失点というピンチになって訪れている。 前川からパスを受けたダンクレーが、リキ・プッチ(19)の激しいプレスに遭う。苦し紛れに前方へ出そうとしたパスをプッチにブロックされ、そのままゴール前にフリーでもち込まれる。右足から放たれたシュートは左ポストをかすめるように外れ、何とか事なきをえた。 欠点や課題を含めて、ボールをつなごうとするヴィッセルをすぐに看破したのだろう。連動したプレスでヴィッセルのポゼッションを分断し、ともに無得点で終わりながらもシュート数で7対2と上回った前半の戦いへ、バルベルデ監督はこんな言葉もつけ加えている。 「ゴールキーパー以外にも素晴らしい選手がいるので、もし私たちが間違ったプレー、あるいはミスを犯せば危険なチームになる。ただ、スタイルとしては素晴らしいと思っています」 前半のヴィッセルが放った2本のシュートは、いずれもイニエスタによるものだった。開始わずか4分。相手のミスを突いてボールを奪い、左足を一閃するもボールは左ポストをわずかにかすめた。バルベルデ監督が言及した「素晴らしい選手」とは、もちろんイニエスタを指す。 40分にはセンターサークル内でパスを受けたイニエスタが、無人の右サイドを駆けあがるFW小川慶治朗(27)へ絶妙のスルーパスを一閃。小川がボールをキープする間にポジションを上げ、GKテア・シュテーゲン(27)に防がれたものの、リターンを受けて左足から惜しいシュートも放った。 スピードを武器とする小川には、10分と36分にも縦パスを通してカウンターを発動させている。カウンターがダメということではない。しかし、イニエスタが加入した昨夏から明確な目標として掲げられたポゼッションスタイル、いわゆる「バルセロナ化」とは対極に位置すると言っていい。