<北朝鮮内部>広がるカード決済、その仕組みは?信頼度は? (2)普及進むも「国を信用できない」と忌避する空気も 当局は金の流れ把握し監視強化
北朝鮮当局は最近、現金ではなくカード決済の普及を強力に推し進めようとしている。最も大きな動きとして見られるのは、カードによる労賃(月給)の支払いだ。労働者たちに銀行口座の開設とカード発行を強要しながら、脆弱だった電子決済システムのインフラ整備にも注力している。当局の狙いは何か? 前回に続き、3人の取材協力者が6月に送ってきた報告をもとに、北朝鮮のカード使用の実態を探る。(チョン·ソンジュン/カン·ジウォン) ■【未公開写真】 これが金正恩氏の母・高ヨンヒ氏の若き日の姿 幼き正恩氏と2ショットも(8枚)
◆プリペイド? デビット?
今回の情報を伝えて来た取材協力者のA氏、B氏は両江道(リャンガンド)に、C氏は咸鏡北道(ハムギョンプクド)に居住している。 住民たちが使うカードの正体は何だろうか? C氏は、カードの発行手続きについてこう説明する。 「個人がカードを作るためには、本人の公民証(住民登録証)と申請書を提出する。申請書には、住所や職場などの個人情報を記載し、居住地の人民班長の印鑑が必要だ。カードを作ったら3万ウォンから入金可能で、手数料は月750ウォン。手数料を払えなければ、使用が中止される」 協力者B氏によると、カード発行時に手数料を一括払いで支払うことも可能なようだ。 「毎月の手数料の代わりに、加入費として5000ウォンを一括で払って、カードを作ることもできる。月々手数料を払うよりも、こちらを選ぶ人が多い」 ※北朝鮮1000ウォン=日本約17円 協力者の報告をまとめると、ここでいうカードとは、日本の交通系カードのように現金をチャージして残高の限度内で使用できるプリペイドカードタイプのように聞こえる。しかし、A氏の説明によると、銀行口座と連動したデビットカードタイプである可能性もあるようだ。 「カード発行には必ず通帳が必要で、発行は銀行だけで可能だ。外貨カードのような特別なカードは観光客や外国人が対象で、一般住民には発行されない」(協力者A氏) 現在使われているカードの正確な種類と決済方法については、追加の調査が必要だ。 ※2010年に外貨専用の電子決済カードとして発行された朝鮮貿易銀行の「ナレ」カードは、コロナ以前の時点では北朝鮮住民も使用できるとされていたが、現在も同様なのかは不明だ。