『M-1グランプリ』審査員の人選だけじゃない…今大会「3つの焦点」と「危険な兆候」
注目は審査員ではなく審査そのもの
22日、いよいよ『M-1グランプリ2024』(ABC・テレビ朝日系)が放送される。今年も15時から敗者復活戦、18時30分から決勝戦が立て続けに生放送される約7時間超の長時間特番。出演者が変わってもスケールはまったく変わっていないだけに、一定以上の盛り上がりが期待できそうだ。 【一覧】テレビ局「本当は使いたくないタレント」…ワースト1位は意外な大御所…! 15日放送の事前特番『M-1グランプリ20回記念 俺たちだって面白い!1万組のエントリー物語』で審査員が発表された。その人選や人数増に今も賛否の声が飛び交っているが、今回の注目はそれだけではない。主に3つの焦点があり、それは視点を変えれば危険な兆候にも見える。 1つ目の焦点は、やはり審査員の問題。ただし、「審査員の人選ではなく、審査そのもの」と言ったほうがいいかもしれない。 今回審査員を務めるのは、石田明(NON STYLE)、海原ともこ(海原やすよ・ともこ)、柴田英嗣(アンタッチャブル)、哲夫(笑い飯)、博多大吉(博多華丸・大吉)、塙宣之(ナイツ)、山内健司(かまいたち)、礼二(中川家)、若林正恭(オードリー)の9人。 年齢、芸歴、東西、事務所……実にバランスが取れた顔ぶれがそろった。「全員が漫才師」だけに1人の独特な審査に振り回されるようなことは考えづらい。
9年前と同じ「象徴からの脱却」
審査員が7人から9人に増えるのは2015年以来9年ぶり2度目。また、当時は2010年での終了から5年ぶりに復活し、「島田紳助×松本人志という大会の象徴からの脱却」という意味合いが強かった。アンタッチャブルを除く歴代王者9組から各1人が審査員を務めたが、「脱・松本人志」「全員漫才師」という2点で今回の状況と似ている。 その後、審査員は2016年に歴代最少で唯一の5人体制になって松本が復活。2017年以降は2人増えて松本を含む7人体制が続いてきた。つまりたった1年で「“大会の象徴は松本人志”という状態に戻し、最適なバランスとして7人体制を続けてきた」ということだろう。 しかもその間メインは漫才師だが、コント師、落語家、ピン芸人を含む構成だっただけに、ここにきての「全員漫才師」。しかも大ベテランを入れず40代前半から50代前半の現役バリバリに振り切ったことから、運営サイドが「『M-1』のリブランディングを図ろうとしている」のは間違いないだろう。はたして9年前に一度自らが否定した形へのリトライは成功するのか。 いずれにしても「漫才師としての現役感を前面に押し出すことで、松本人志の不在を感じさせない」という制作サイドのメッセージを感じさせられる。しかし、その現役感には落とし穴があり、今年の賞レースに影を落としてきた。 10月12日に生放送された『キングオブコント2024』(TBS系)は500点満点の審査であるにもかかわらず、ファーストステージでは10組中上位8組が8点差以内、ファイナルステージでは3組が3点以内に集中。計1000点での総合得点でも1~3位が2点差以内に集まる大接戦だった。 これを「ハイレベルな大接戦」と手放しで称賛するのはさすがに無理があり、ネット上には疑問の声が続出。批判を避けるように92~95点あたりの高得点を連発し、称賛ばかりのコメントを見た人々から「審査基準がわからない」「審査員の責任を果たしていない」などの不満があがっていた。