『M-1グランプリ』審査員の人選だけじゃない…今大会「3つの焦点」と「危険な兆候」
かつては70点台も当たり前だった
『キングオブコント』の審査員は「全員現役バリバリのコント師」が務めるだけに、この「点差をつけたがらない」という問題はそのまま『M-1グランプリ』にも当てはまるリスクが高い。逆に言えば今回の9人は、「いかに点差を付けた上でその理由を説明できるか。称賛ばかりにならず、時に厳しい指摘ができるか」が求められている。 かつての『M-1』は80点台どころか70点台も当たり前で50点すらしばしば見られた。「全員漫才師」だった2015年でも「全体の4割強が80点台」とシビアに採点できていただけに、9年の時を経た今、彼らが批判を恐れず同等レベルの審査ができるか、胆力が問われている。特に1組ごとに細かく点差をつけ、時に厳しいコメントを交えた松本人志が不在だけに、「同じような点ばかりで9人に増えても意味がない」という印象は避けたいところだろう。 次に12月10日に生放送された『女芸人No.1決定戦THE W 2024』(日本テレビ系)の審査は採点ではなく勝敗を決める二択だが、こちらは“民意との乖離”が問題視された。審査員6人+視聴者票の計7票で勝敗を決めるのだが、視聴者票が入った上で勝ったのは10戦中3回のみ。しかもその3回中2回は誰もがわかりそうな満票での圧勝であり、「笑えないネタが勝つ大会」という不本意なレッテルを貼られてしまった。 今年は『キングオブコント』も『THE W』も例年以上に審査内容への賛否があがり、「大衆性」「一般ウケ」という基準の不足が指摘されたが、これは『M-1』にもあてはまりかねない事態。ただでさえ『M-1』には「笑いよりも競技寄りになりすぎている」という指摘もあるだけに、玄人受けすぎる基準ばかりでは理解を得られないだろう。 そもそもあえて審査員の数を増やすのは、「象徴的な存在だった松本人志の不在をカバーする」ためだけでなく、「全体の点差がつきやすくなる」「1人にかかる責任を減らす」という保守的な背景も見える。各個人がそれに甘えず勇気を持って採点できるのか、放送中から厳しい目が注がれそうだ。