F1の分配金の不平等はなぜ起きているのか?
先ごろ、F1の2016年度のチームの分配金の詳細をイギリスのメディアが公開した。これによれば、最も多くの分配金を得たのは、チャンピオンチームであるメルセデスAMGではなく、選手権3位に終わったフェラーリだった。なぜか? それはF1がほかの多くのスポーツと大きく異なり、賞金や契約金などの金銭のやりとりに関して独特のルールが存在しているからだ。 個人競技の場合、例えば、ゴルフやテニスなどは大会ごとに定められた賞金を、結果に基づいて選手が得ているが、F1では優勝したドライバーが得る賞金は1円もない。 団体競技の場合、例えば大リーグやサッカーなども試合の勝ち負けによって選手が直接賞金を得ることは基本的にはない。彼らはチームに所属しているため、チームから年俸という形で報酬を得ている。F1もある意味チームスポーツなのでこれに近いが、決定的に違うのはチームはテレビ放映権料、スポンサーとの契約金、チケットの売り上げなどを得ることができるのに対して、F1はチームがそれらすべての権利を有していない。 その理由は、コンコルド協定というF1界独特の契約が存在しているためだ。 コンコルド協定はF1が現在のように世界的なスポーツに成長する前の80年代初頭に締結された興行面の権利を管理する協定だ。名前の由来は、締結された場所が国際自動車連盟(FIA)の本部があったフランス、パリのコンコルド広場だったからだ。 コンコルド協定では、F1を管理する団体はグランプリ開催権料、テレビ放映権料、スポンサー料などをすべて得て、それをコンコルド協定で定めた割合で分配することになっている。この分配の割合が独特であるため、前年3位のフェラーリが最も多くの分配金を得るという現象が起きているのだ。 分配金の構成は大きく2つから構成されていて、ひとつは成績に応じた分配金。もうひとつは特別ボーナスだ。フェラーリは総額1億8000万ドルを受け取ることになっているが、そのうち成績に応じた分配金は7700万ドルに過ぎず、残りの1億300万ドルは成績に関係なく与えられるボーナスである。このボーナスはフェラーリ以外にもメルセデスAMG、レッドブル、マクラーレン、ウイリアムズの5チームが受け取っている。 しかも、フェラーリのボーナスである1億300万ドルは、昨年覇者のメルセデスAMGが得る成績に応じて得る分配金である9700万ドルよりも多い。つまり、フェラーリは選手権が開幕する前から、多額の分配金を保証されているということになる。