【F1分析】角田裕毅17位。まるで”一番悪いシナリオ”をあえて選んだみたい……それほどまでに不可解だったオランダGPのRBの戦略
■繰り返されたピットストップタイミングのミス
このグラフは、レース中の各車の首位との差を示したものだ。角田にとっての3つ苦境は、このグラフから全て見て取れる。 ひとつ目は赤丸で示したヒュルケンベルグに抑えられた場面。ふたつ目の苦境はアルピーヌのエステバン・オコンに2度にわたって抑えられたこと(青丸)、そして3つ目はウイリアムズのローガン・サージェントに抑えられたこと(緑丸)だ。 1回目のピットストップを終えた角田は、前述の通りヒュルケンベルグの後ろのままコースに復帰した。そのヒュルケンベルグは徐々に角田を引き離し、そしてまだタイヤを変えていなかったオコンをあっさりとオーバーテイクしていった。しかし角田はオコンの真後ろにつくもなかなかオーバーテイクするに至らず、そうこうしているうちにオコンはピットイン……この瞬間は「前が開けた」と安堵したが、実はアンダーカットされたのと同じような形となった。その数周後に2度目のピットストップを行なった角田は、オコンの真後ろでコースに復帰。そして再びオコンを抜けなかったのだ。これでは、1回目のピットストップ後にヒュルケンベルグの後ろに再び戻ってしまったのと同じことの繰り返しだ。 しかもそのオコンは、前に現れたサージェントをオーバーテイク。一方で角田は、フィニッシュまでサージェントを抜けなかった。 角田がここまでオーバーテイクできなかったのは、とにもかくにも最高速が足りなかったことにある。そんな中で2ストップ作戦を選ぶとは、完全なミスに他ならない。 2ストップ作戦で前を追うならば、1ストップでペースが落ちたマシンをコース上でオーバーテイクしなければならないシーンも当然出てくる。そのためには、当然優れた最高速がなければ成立にくい。にもかかわらず、RBが最高速重視ではないマシンセッティングで2ストップ作戦を採ってしまったことには、大きな疑問符がつく。 その上、1回目は前述の通りヒュルケンベルグ、2回目はオコンの真後ろでコースに戻るようなタイミングで角田にピットインを指示するのも、理解に難しい。厳しい言い方をすれば、最も悪いタイミングを選んでピットに呼び込もうとしたとしか思えないくらいだ。 むしろ今回のマシンならば、チームは1ストップを狙うべきだっただろう。前述の通り、ソフトタイヤでのペースは悪くなかったし、前を行っていたヒュルケンベルグがピットに入ってくれたのだから。しかも最高速は遅くとも、たとえば30周目前後(グラフ黄丸の部分)のように、最高速に優れるマシンを抑え込むことはできたのだから。 角田にとってオランダGPは、あまりにも悔しすぎる1戦となった。スタート位置を考えればなおさら……チームには、徹底的な見直しと検証を期待したい。
田中 健一
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