【F1分析】角田裕毅17位。まるで”一番悪いシナリオ”をあえて選んだみたい……それほどまでに不可解だったオランダGPのRBの戦略
F1オランダGPの決勝レースを、RBの角田裕毅は17位でフィニッシュした。角田は戦略がまったく上手くいかなかったと不満を訴えていたが、そのレースをデータを基に振り返ってみよう。 【リザルト】角田裕毅落胆の結果に……F1第15戦オランダGP決勝レース結果 角田は11番グリッドからソフトタイヤでスタートしたが、いきなりハースのニコ・ヒュルケンベルグに先行され12番手、さらにはメルセデスのルイス・ハミルトンにも抜かれ、13番手でレース序盤を推移した。 その後、ヒュルケンベルグはしばらくの間ハミルトンを抑えたが、10周目にはハミルトンがオーバーテイクを完了。角田の目の前には再びヒュルケンベルグが現れた。この頃のヒュルケンベルグはすでにタイヤのデグラデーション(性能劣化)に苦しみ、ペースを落としていた。一方で角田のペースは安定していたのだが、なかなかヒュルケンベルグを攻略できなかった。
■なぜヒュルケンベルグと同時にピットインしてしまったのか??
この状況が上のグラフだ。濃いピンク色がヒュルケンベルグ、青い線が角田である。赤丸で示した10周目、11周目は、角田のペースの方が圧倒的に優れているのが良くわかる。しかし真後ろに追いついた12周目には抑えられたことで2台のペースはほぼ同じ。13周目も同様だった。 角田がヒュルケンベルグを抜けなかった理由のひとつが最高速の違いである。決勝レース中、1コーナー手前に引かれたスピードトラップでの最高速は、ヒュルケンベルグが328.7km/hだったのに対し、角田は315.9km/h……実に13km/h近い差があったのだった。これでは、ラップタイムがいかに速くとも、角田としてはオーバーテイクを成功させるのが実に難しかったはずだ。 コース上でヒュルケンベルグを攻略できないと判断したチームは、角田にピットインを指示する。つまり、タイヤを先に交換することで新しいタイヤのアドバンテージを活かし、アンダーカットしようとしたのだ。 しかし角田がピットインした瞬間、チームにとってはひとつの誤算があった。それは、あろうことかヒュルケンベルグも同じタイミングでピットストップしてしまったのだ。これで角田は、ピットアウト後も再びヒュルケンベルグの後ろで過ごすことになったわけだ。 ここが、まずひとつの戦略ミスである。このタイミングでのピットストップは、ヒュルケンベルグをアンダーカットするのと同時に、先にタイヤ交換を済ませていたウイリアムズのアレクサンダー・アルボンにアンダーカットされるのを阻止するという意味合いがあったはずだ。ただ、ヒュルケンベルグと同じタイミングでピットインしてしまっては、アルボンの前でコースに戻ったとしても何の意味もなさない。もしヒュルケンベルグがピットインするならステイアウトだ! と角田に指示しておくべきだった。当時の角田には、まだそれほどタイヤのデグラデーションの傾向が見て取れないので、自動的にヒュルケンベルグが前からいなくなってくれれば、ペースを上げられた可能性がある。 そしてこのミスが、角田にとってふたつ目、そして3つ目の苦境につながっていくことになる。それがこのグラフを見るとよくわかる。
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