政治の裏舞台「荻外荘」が復原、9日から内部公開 設計は築地本願寺で知られる伊東忠太
3度にわたって首相を務めた近衛文麿が所有し、先の大戦に関わる重大な政策決定をした「荻窪会談」の場ともなった「荻外荘(てきがいそう)」(東京都杉並区荻窪)が「復原」し、一般向け内部公開が9日に始まる。家屋を受け継いだ次男で元東京大教授の通隆さんが平成24年に亡くなると、地域で保全機運が高まった。その後、区が購入し、約10年を経て会談があった昭和15年当時の状態に戻された。築地本願寺や両国の東京都慰霊堂などで知られる伊東忠太氏の設計で文化的価値も高く、平成28年に国の史跡にも指定されている。 荻外荘は昭和2年、東京帝国大医科大教授を務めた入沢達吉が別邸として建築。12年に近衛が譲り受け、住み始めた。ここで第2次近衛内閣で陸相に就任予定の東條英機らと15年に行った「荻窪会談」は有名。会談後、日本は独伊と同盟を結び、南進政策を決める。近衛が戦後にGHQ(連合国軍総司令部)からA級戦犯とされ、自決したのもこの家の寝室だ。 平成26年に杉並区が建物と敷地を取得。会談の開かれた客間は区外に移築されていたが所有者と協議して再移築をし、家具や調度品なども職人や専門家の手で当時の姿によみがえらせた。同区ではあえて「復原」という言葉を使用している。また、建物の公開に合わせ、近衛文麿も着用した公爵用の大礼服も、時代考証を行い職人による手でよみがえらせた。蔵で展示する。 9日から一般公開。観覧券は一般300円、小・中学生150円。また、施設運営の指定管理者は和菓子店「虎屋」グループの虎玄(港区)が担い、来年夏には、建築家の隈研吾氏が設計するカフェが荻外荘公園内にオープンする予定だ。それまでの間、荻外荘内で喫茶を楽しめるコーナーも設ける。 区みどり公園課では、「歴史についてはインターネットなど検索するとすぐでてくるが、歴史の転換が行われた舞台が自分たちのすぐ近くにあることを、ここで実感してほしい。歴史、建築、お菓子など自分の興味から入り、知識を広げてほしい」と話している。(原田成樹)