星野監督に聞いた 楽天日本一の理由
東北がひとつになった。 王者、巨人と3勝3敗のまま勝負は、原監督が「世紀の一戦」と表現した最終戦にもつれ込んだ。雨が降るKスタは燃え上がった。東北楽天ゴールデンイーグルスは創設9年目にして初の日本一に輝いた。感動の瞬間から一夜明けて私は、星野仙一監督に、ひとこと、「おめでとう」と言いたかったが、なかなか連絡をつけることができなかった。 [表あり]幻の楽天監督が語る なぜ星野監督が勝てたか ■楽天はなぜ日本一になれたか? 楽天は、なぜ勝てたのか、なぜ巨人を前にして萎縮することもなく若い力を発揮することができたのか。その理由を闘将の口から直接聞いておきたかったのである。ようやく、その生声が聞けたとき、星野監督は「疲れた、ホッとした」と絞りだすように言った。 「東北の皆さんのために」という決意と覚悟は、相当なプレッシャーとなって指揮官にのしかかっていたのだろう。 「わかると思うけれど、戦力、経験では巨人に及ばない。でもチームに、そして現場とフロントの間に、一体感が生まれ、ひとつにまとまった。強い相手には、全員でひとつになってぶつかっていく。これしかないな」 ■ジョーンズが示したチームへの献身さ 星野監督は、“一体感”、“ひとつにまとまる”という言葉で日本一の理由を表現した。 「DHの使えない東京ドームでは、ジョーンズが『俺はどこを守ればいいのか? 外野でもどこでもやる』と言ってきたんだ。あれだけのメジャーで実績のある選手が、チームのためにという姿勢を見せる。自然と、一体感は出るよ。シリーズでも結果が出たけれど、ジョーンズ、マギーの2人の有形無形の影響力は計り知れないな」 交流戦では、ジョーンズは主に一塁を守っていた。しかし、不動の3番打者となった銀次も一塁しか守れない。そういうチーム事情を察して、ジョーンズが来日初となる左翼の守備で出場可能なことを星野監督に伝えてきたのである。元々は、アトランタ・ブレーブス時代の1998年から07年までゴールドグラブ賞を受賞する名手ではあるが、足や肩の衰えは隠せない。老体に鞭を打った、その姿に星野監督だけでなく、チーム全体に「ジョーンズがあそこまでやるなら」という一体感が生まれたのである。