安倍首相は米国とイランの仲介をできるか?
安倍晋三首相が12日からイランを訪問し、ロウハニ大統領と会談します。アメリカのトランプ政権は、オバマ前政権時代に締結された「イラン核合意」から離脱し、イラン産原油の輸入禁止といった経済制裁を打ち出し、さらにペルシャ湾周辺に空母などを派遣していることから、イランとの関係が悪化しています。今回の首相のイラン訪問は、そうした両国間の仲介が期待されています。元外交官で平和外交研究所の美根慶樹代表に寄稿してもらいました。
●トランプ大統領の狙い
安倍首相は12日から3日間の予定でイランを訪問します。5月27日の安倍首相とトランプ大統領による首脳会談後の共同記者会見ではトランプ大統領が安倍首相にイランとの仲介を期待していることが明らかになりました。 それには理由があります。トランプ氏は、「オバマ大統領時代に作られたイランとの核合意を修正したい。そのためイランに圧力をかけることもいとわない。しかし、戦争は望まない。イランとは対話したい」という立場です。 しかし、米国を支持する国はほとんどありません。日ごろから米国と意見を違えることが多い中国やロシアなどはもちろん、英国、フランス、ドイツなど西側の「核合意」関係国はイランとの合意を維持すべきだという立場であり、一方的に離脱した米国に批判的です。 そこでトランプ氏が注目したのが日本でした。日本はイランと伝統的に友好関係にあり、また、核合意は維持すべきだという立場ですが、米国を批判はしていません。トランプ大統領はこの日本の立場をよく知っており、イランとの関係で望ましい道を切り開いてくれる可能性があるのは日本しかないと考え、イラン訪問を検討中の安倍首相に仲介を頼んだのです。 日本以外の国では、イスラエルはもちろん米国を支持するでしょうが、米国以上にイランと対立的であり、仲介などとてもできません。 日本はイラン原油の主要輸入国ですが、米国のイランに対する制裁の影響を受け、この5月から輸入できなくなりました。そのため、日本としては、米国とイランの関係修復が進み、制裁が解除されることを望んでいます。可能であれば、安倍首相が一肌脱ぎたいと考えるのはもっともです。