筋肉は必要ならば確実に太くなり、必要なければ速やかに細くなる
体のサイズによって必要な筋肉量は変わる
今回は「筋肥大」について考えてみたいと思います。 そもそもヒトをはじめとする生物には、なぜ筋肉が太くなるという仕組みが備わっているのでしょうか。 筋トレしてるのに「朝タン」してないの? 筋育の最新トレンドを管理栄養士が解説【動画】 本質的なことから言うと、生物の生活環境に非常に大きな影響を及ぼしている要素は、地球上の「重力」です。その重力を受けながら運動しようとすると、それに抗うための力を発揮することが不可欠。普通に暮らしているとあまり意識しないかもしれませんが、私たちはつねに重力に逆らう力発揮をしているのです。そして質量が大きくなるほど“慣性”の影響が強くなるので、その運動を制御するためにはより大きな力が必要となります。 このような事情から、体のサイズに応じて必要な筋肉量は変わってきます。 たとえば、豆腐はサイズが小さければサイコロ状の形を維持できますが、あるレベルを超えて大きくなると同じ形を保つことができなくなります。これは「スケーリング問題」と呼ばれるもので、最も単純な例で説明すると次のようなメカニズムによります。 一辺が1センチメートルの立方体の体積は1×1×1で1㎤。その一辺が10倍になると10×10×10で1000㎤になります。重さは体積に比例するので、同じく1000倍になります。ところが、それを支える断面積は縦×横に比例するので100倍にしかなりません。つまり、サイズの増大に伴う重量を支えるための断面積は、重さに見合って大きくなってくれないという特徴があるのです。 ですから、地上で体を支えたり積極的に動いたりするには、体のサイズの増大よりも、さらに筋肉や骨が発達しないといけなくなります。このことは別の回でもウルトラマンを例にして説明しましたね。 生物は必然的に小さく産まれて大きく成長します。したがって、成長しつつある体を動かすため、筋肉がさらに太くなろうとするのは自然であると言えるでしょう。力学的な環境(筋肉の増大が必要とされているかどうか)を感じとり、たしかにそういう状況であると判断されれば、筋肉は確実に太くなっていきます。 逆に宇宙のような無重力空間になると筋肉がなくても運動できるので、エネルギーの無駄遣いを避けるために速やかに筋肉を細くする仕組みも備わっているわけです。