「吉本新喜劇｝左から清水けんじ、吉田裕、酒井藍、間寛平、すっちー、アキ、島田珠代（2024年7月撮影）

　「吉本新喜劇座員総選挙」は、今年で3回目が行われた。開票結果としては、アキ座長が安定の3連覇。「清水けんじより下になったら座長を下りる！」と宣言していた吉田裕が、まさかの8位となり、6位の清水に完敗。「うわー、どうしよう？」と頭を抱えていた。 　話題も、見どころも満載だった開票イベント。この現場（大阪・YESシアター）に参加していて「ふだん見られない座員の表情が間近で見られて、こんな楽しいイベントはない！」と痛感した。 　参加した86人の座員は、それぞれの思いを胸に劇場の座席に着席。谷川友梨、小寺真理らはふだんの舞台衣装とはガラリ変わってドレスアップしていた。 　さて、このイベントをおおいに盛り上げた立役者は、MCのテンダラー。白川悟実と浜本広晃はNGK（なんばグランド花月）の客席に爆笑を呼ぶ実力者だが、この日のMCでも抜群の力量を発揮した。 　淡々と進行する場面もあれば、座員のヤジを受け止めたり、自らギャグをぶっこむことも。 　なかでも「うまい！」とヒザを打ったのは、「29位！　今別府直之！」とコールして、意気揚々とステージに上がった今別府を見て、浜本が「今のはリハーサルでした」。 　要するに「ドッキリ」だったのだ。もちろん、これは互いの信頼関係があってこそ成り立つギャグ。しかし、ピエロに仕立てられた今別府は、なんとも複雑な顔をしていた。 　テンダラーとともにMC席にいた間寛平GM（ゼネラルマネジャー）は「ちょっと、それはあかんのと違う？」と今別府を気遣った。仲間思いで優しいGMらしい一瞬だった。 　今別府には申し訳ないが、客席からは大爆笑があがった。テンダラーの飛び道具は、これだけでは終わらない。 　29位から11位までは4人、5人ずつ名前が読み上げられていたが「さあ、ここからはベスト10。ひとりずつ紹介いたします」と神妙な浜本。そして高らかに「第10位！　今別府直之！」と読み上げた。 　今度こそ、と笑顔で舞台に立った今別府。客席からも「さっきはだまされたけど、10位でよかった！」と今別府に温かい拍手が湧き上がった。しかし、またも「リハーサルはここまでです」と浜本、非情の声。 　1度ならず2度までドッキリに遭ってしまった、かわいそうな今別府（いや、おいしいというべきか）。 　そしてクライマックス。3位山田花子、2位すっちー、と進み、注目の1位。とはいえ、昨年の実績を鑑みてもアキの名前がコールされるのは確実だった。 　再び、浜本の声が場内に響く。「1位は、おやどまり！」。 　もう、ここまで来るとギャグであることは明々白々。それでも、おやどまりは堂々とステージにあがり、高々と手を振った。また爆笑。 　残念ながら今別府、おやどまりは上位29位に入れなかった。しかし、目撃者のひとりとして言っておく。 　ライブ感もあって、実に楽しいイベントだった。陰の立役者は文句なしで今別府、おやどまり。来年はドッキリでなく、上位に選ばれてほしい。【三宅敏】（ニッカンスポーツ・コム／コラム「ナニワのベテラン走る～ミナミヘキタヘ」）