米自由化30年振り返る スーパーが主戦場に 産地はブランド米戦略
ブランド林立、ルート複雑化
消費者の米離れや安売りが課題となる中、産地では売れる米作りが重要な戦略となっていく。良食味のブランド米は、新潟「コシヒカリ」や秋田「あきたこまち」を筆頭に、1990年代に宮城「ひとめぼれ」、山形「はえぬき」がデビュー。2000年代には北海道「ななつぼし」、青森「まっしぐら」が台頭し、10年には山形「つや姫」が全国でお披露目となった。 近年でも、秋田「サキホコレ」や青森「青天の霹靂」などが登場しており「(ブランド米の開発は)戦争になっている」(同)。ただ近年は、安定的な生産が求められ、高単価・良食味から、暑さに強い米へと品種開発がシフトしている。 23年産を境に、現代の流通構造が抱えるリスクが顕在化している。記憶に新しい「令和の米騒動」が発生し、スーパーから米が消えた。24年産でも、産地や流通業者の激しい調達競争が続いている。背景には、食管法の廃止に伴う米流通の複雑化がある。参入するハードルが下がり、集荷や販売に携わる業者が急増。24年産は、従来主流だったルートに流れる米が減り、流通段階で混乱を招いている。 今、米流通は転換期を迎えている。米不足を受けて、小売りや卸は、直接仕入れを増やそうと産地やJAに接近。複数年契約を希望する声も多く聞こえ、量と価格の安定を目指す動きが活発化している。産地、流通業者は共に、選ばれる取引先となるための工夫が次の激流の時代を生き抜く鍵になりそうだ。
情報発信強化で円滑に 東北大大学院 冬木勝仁教授
食管法が廃止され、米は一般的な商品になった。需給や売り方などで価格が上下する商材へと変化した。 この30年で国も変わった。需給調整からほぼ手を引いた。ただ、年一作の米で需給均衡を図るためには、流通段階で需給調整していくしかない。新しい食料・農業・農村基本法では、食料安全保障が明記されている。備蓄米の運用などを通じて、国が責任を持って需給に関与していくべきだ。 流通の可視化も重要になる。23、24年産米での混乱は、あるはずの米の所在が情報不足で分からなかったことが一つの要因だ。国だけでなく、米卸やスーパーなどの流通業者、産地でも情報発信を強化していくことが、円滑な米流通に向けて必要だろう。
日本農業新聞