唯一の非条例県 長野県が「淫行条例」制定にかじを切った背景とは
青少年を守る対策でこれまで全国唯一、条例によらない県民運動に取り組んできた長野県が、青少年との性行為を処罰する淫行処罰条例の制定に動き、17日開会の県議会に条例の骨子案を示す方針です。「条例によらない県民運動」は長野県の誇りともされてきましたが、同県の阿部守一知事はインターネットの広がりなどで社会環境が大きく変化したことなどを方針転換の理由としています。県議会にも条例制定に賛否があり、論議が注目されています。 【写真】渋谷区の「同性カップル証明書」全国初の条例は広がるか
17日開会の県議会で議論
条例の骨子案は「子どもを性被害から守るための条例(仮称)骨子(案)」として12日、県が公表しました。その概要のうち焦点になっているのは、18歳未満の子どもに対し「威迫し、欺きもしくは困惑させ、またはその困惑に乗じて、性行為やわいせつな行為を行ってはならない」とし、これを行った大人は2年以下の懲役または100万円以下の罰金を科す、という部分です。 条例によらない県民運動の継続を支持してきた関係者や法律関係者、メディアからは「困惑とはどういう状態か不明確で、大人と18歳未満とのまじめな恋愛についても18歳未満が困惑していたからという理由で摘発して冤罪となるおそれがある」との指摘や、「恋愛という人間の基本的な関係に捜査が関与することで事実がゆがめられるおそれはないのか」などの問題点が指摘されています。 骨子案には「国民の権利を不当に侵害しないように留意する」との項目も盛り込まれており、県側は「真摯(しんし=まじめ)な恋愛は規制しない」としているものの、「真摯な恋愛」をどうとらえるかはあいまいで、捜査の現場でどう判断されるか疑問だとする声も出ています。
「県民運動方式」から「条例化」へ
長野県では歴代知事が条例によらない県民運動方式を尊重してきましたが、ここへ来て阿部知事が条例化に大きく舵(かじ)を切ったのはなぜか。県は、インターネットが広がったことなどで青少年が性被害に巻き込まれるおそれが大きくなっていることなどを挙げています。 また、県警が把握した過去2年間のケースとして、大人に誘われたり脅されるなどして性行為に応じた青少年が17件、20人に上り、これらは現行法では摘発できなかったことなども参考例としてこれまでの有識者などの検討会議などに提示。条例制定への地ならしにしてきた経過もあります。