4万円以内で買えるFOSTEXとオーテクのアクティブスピーカー、聴き比べてみた
「外出時にイヤフォンで聴いている音楽を、自宅でも聴きたい」と多くの人が思っているはず。一方で、最初はスマホの内蔵スピーカーで聴いていても、音質や音圧が物足りず、リーズナブルなポータブルBluetoothスピーカーに手を出してみたけれど、どうもしっくり来ない……という人も多いのではないだろうか。 【画像】PM0.1BDを13インチMacBook Airと並べたところ そんな人が次のステップアップとして検討するのが、ステレオサウンドが楽しめる2ch仕様のスピーカーだろう。なかでもアンプ内蔵のアクティブスピーカーは多くのメーカーから発売されていてデザインや性能、価格もバラエティ豊かだ。 選択肢が多いと、一体どれを買えば良いのか悩んでしまうもの。そこで今回は予算4万円で購入できるモデルを3製品ピックアップ。一気に聴き比べてみた。 ピックアップしたのは、FOSTEXの「PM0.1BD」と「PM0.3BD」、オーディオテクニカの「AT-SP3X」の3モデル。直販価格はPM0.1BDが28,600円、PM0.3BDが38,500円、AT-SP3Xが29,700円だ。今回はいずれもメーカーから実機を借りて試聴している。 ■ 3モデルの特徴を紹介 今回ピックアップしたモデルを簡単に紹介しておこう。3モデルのなかで、もっともリーズナブルなPM0.1BDは、2024年6月に登場した新モデル。低域から高域まで素直な音質でシャープな音像を再現するという新設計の75mm径フルレンジドライバーを1基搭載している。 筐体は木製で、エンクロージャーとアンプ部を分離した構造で、ドライバー背面から出る音圧がアンプの電子回路に及ぼす影響を排除。左右の各スピーカーも構造を同じにすることで、左右差に起因する音質の差異も極力排除したという。 接続方法はステレオミニのAUX入力のほか、Bluetooth 5.0にも対応しており、ワイヤレスのBluetoothスピーカーとしても使用できる。Rch側の本体前面にボリュームノブや入力切替を備えていて操作もしやすい。 そんなPM0.1BDと同じくFOSTEXが販売しているPM0.3BDは、2023年6月に登場したモデル。75mm径ウーファーと19mm径ソフトドームツイーターを搭載した2ウェイ仕様となっている。 こちらも筐体は木製で、エンクロージャーとアンプを分離した内部構造を採用。左右の各スピーカーも構造を同じにしている点はPM0.1BDと同じだ。 接続はステレオミニのAUX入力とBluetooth 5.0に加え、USB Type-C入力にも対応。Bluetooth経由でスマホとワイヤレス接続したり、PCとUSB接続して高音質で音楽などを楽しむこともできる。USB入力時は96kHz/24bitまでサポートする。 Rch側スピーカーの前面に電源ボタンや入力切替ボタン、ボリュームノブを搭載しており、操作性も確保している。また今回は使用しなかったが、サブウーファー接続端子も備えており、別途アクティブサブウーファーを繋いで、より迫力あるサウンドを楽しむこともできる。 オーディオテクニカのAT-SP3Xは2024年7月に登場した最新モデル。76mm径ウーファーと27mm径ツイーターの2ウェイ仕様で、このドライバーとエンクロージャーの音響設計に加え、内蔵DSPにより音質をチューニング。バランスに優れたフラットでクリアなサウンドを実現したという。 ツイーター前部には音を広げるグリルを採用。背面にはバスレフダクトを備えており、インパクトのある低音を生み出すとのこと。筐体には堅牢性のあるMDF(Medium Density Fiberboard:中質繊維板)材を採用し、スピーカー自体からの不要な振動を抑制。 入力はアナログRCAとBluetooth 5.3に対応。こちらもスマホとワイヤレス接続して使用できる。本体背面にはUSB-Aポートも備えているが、これはファームウェアなどを更新する際に使うもので、USB入力には非対応。またこのUSBポートを充電用に使うといったこともできない。 ■ 付属品の充実具合に違い。箱から出してすぐ使えるのはPM0.3BD 3機種を並べてみると、ドライバー1基構成の「PM0.1BD」がもっともコンパクトで、狭いスペースにも設置しやすい。3モデルのなかで唯一メッシュグリルが装備されているのも“オーディオを嗜んでいる雰囲気”が感じられる。 2ウェイ仕様のPM0.3BDとAT-SP3Xでは、PM0.3BDのほうがスリムで、13インチMacBook Airと組み合わせてもスタイリッシュなイメージが感じられる。AT-SP3Xは少し横幅が広いが、筐体の仕上げやツイーター前部のグリルなど、見た目の高級感や“スピーカーらしさ”は断トツだった。 ボリュームや入力切替の操作系統はPM0.1BDとPM0.3BDは前面に、AT-SP3Xは側面に備えられえおり、ここは好みが分かれるところ。個人的にはサッと手を伸ばして操作できる前面タイプのほうが好みだが、仕事でも使うデスクトップの上に置くとなると、どうしても机の上は煩雑になりがち。そういった場合でも机の上のモノをどかさずに操作できる側面タイプは便利に感じられた……ちゃんと机を整理すれば良いだけの話なのだが。 また今回驚いたのは、付属品の充実具合に大きな差があったこと。3モデルのなかで、もっとも付属品が充実していたのはPM0.3BDで、AC電源アダプターやワンタッチで接続できるスピーカーケーブル(1.5m)に加え、Type-A to Type-CのUSBケーブル(1m)、ステレオミニ to RCAピン×2ケーブル(1m)なども付属。スピーカー本体を買えば、あとは何も追加で用意する必要がない。 Bluetoothでスマホ経由はもちろん、3.5mmステレオミ経由やUSB経由でPCなどともすぐに接続できる。 一方、PM0.1BDはAC電源アダプターとスピーカーケーブル(1m)、AT-SP3XもACアダプターとスピーカーケーブル(2m)、ゴム脚×8などが付属するものの、USBケーブルやステレオミニケーブルなどは付属しないため、PCやプレーヤーと有線接続して使いたい場合は、別途ケーブルを用意する必要がある。 なお、今回の聴き比べでは付属のオーディオ/USBケーブルは使わず、手軽かつリーズナブルに入手できるケーブルとしてAmazonベーシックの3.5mm to 3.5mmのAUXケーブル(1.2m/574円)と3.5mm to RCAケーブル(2.4m/1,42円)、iPadやMacBook購入時に付属するUSB-Cケーブル「60W USB-C充電ケーブル(1m/2,780円)」を使っている。 今回はBluetoothスピーカーからのステップアップとして手軽さを優先してケーブルを選んでいるが、これらケーブル類はさまざまなメーカーから音質にこだわったものが発売されている。こういったアクセサリーによって変化する音を楽しむのもオーディオの醍醐味なので、ぜひそちらも調べてみてほしい。 ■ 実際に聴き比べ。USB接続できるPM0.3BDに驚き 試聴環境は有線接続はM2 MacBook Airで、音源にはApple Musicを使用した。 まずはPM0.1BDを有線接続で聴いてみる。「Mrs. GREEN APPLE/青と夏」では、ボーカルがくっきりと前面に浮かび上がってくる。その後ろからコーラスが響くので、ステレオらしい立体感のあるサウンドが楽しめる。ボーカルはややくぐもって聴こえるが、音楽を楽しむには十分な解像感だ。ベースやドラムなどの低音はかなり抑えめで沈み込むような迫力はあまり感じられない。 ここ最近、個人的にヘビロテしている「サカナクション/新宝島」も、ボーカル・山口一郎の声がクッキリと聴こえ、こちらも立体感のあるコーラスが味わえる。やはりドラムはキック感がほとんどなく、かなり軽い印象だった。低音マシマシな楽曲として「Creepy Nuts/Bling-Bang-Bang-Born」も聴いてると、R指定のラップやボーカルはハッキリと聴き取りやすいが、肝心の低音が軽く、こういった楽曲との相性はあまり良くない印象だった。 女性ボーカル曲として「tuki./晩餐歌」も試聴してみた。イントロで流れるアコースティックギターの解像感はいま一歩だが、弦を爪弾く雰囲気などはしっかり感じられる。こちらもボーカルは前面に押し出される。解像感も男性ボーカル曲と比べると、こちらのほうが一段高い印象だ。 続いてはPM0.3BDを有線接続で試聴してみた。PM0.3BDはアナログ接続とUSB接続の両方に対応しているので、まずはアナログ接続をチェック。「Mrs. GREEN APPLE/青と夏」では、PM0.1BDよりもボーカルの解像感が高く、より歌詞に没入できる。また曲中に流れるシンバルの音や、サビ終わりに流れる「シャリン」という鈴の音のようなサウンド、2番冒頭に流れるセミの鳴き声など、高域のサウンドがPM0.1BDよりも表現力豊かに感じられる。一方で、低域の沈み込みや迫力は大きくは変わらない印象だった。 「サカナクション/新宝島」もボーカルの解像感がアップ。リバーブ感もより感じられ、音場もPM0.1BDより広くなった印象になる。コーラスはPM0.1BDほどの立体感はないものの、コーラスとしてよりボーカルに寄り添っているようなサウンドだった。 「tuki./晩餐歌」もイントロで流れるギターの爪弾き音が印象的で、ボーカルも細かなブレスのニュアンスが感じ取れる解像感。サビに向けてコーラスが重なってくると、音場の広さも味わえた。 続いてUSB接続にスイッチしてみた。PM0.3BDはUSB接続時最大96kHz/24bitに対応しているので、今回はmacOSの内蔵アプリ「Audio MIDI設定」からフォーマットを「2ch 24ビット(96.0kHz)」に変更して聴いている。 「サカナクション/新宝島」では、アナログ接続からボーカルの解像感が1段アップする上、音場もさらに広がったような、伸び伸びとしたサウンドに変化。物足りなかった低域にもほんの少しだが量感を感じられるようになった。 「この状態ならば」と、「Creepy Nuts/Bling-Bang-Bang-Born」を聴いてみると、締まりのあるタイトで小気味よい低音が流れ、ようやく“B-B-B-B”らしさを味わえるサウンドに。ボーカル部分も下ハモパートの存在感が増して、ボーカル全体に厚みが出てくるような印象だった。 最後にAT-SP3Xを有線接続でチェックする。「Mrs. GREEN APPLE/青と夏」では、イントロから音場の広さと、ズンッという低域の迫力が味わえる。低域再生能力は今回の3モデルのなかでは断トツのトップだ。それでいて、ボーカルのクリアさやコーラスなどの細かい音の表現力もしっかりと兼ね備えている。 「サカナクション/新宝島」も、全帯域で解像感が一番高く感じられ、ボーカルがとてもクリアに耳に飛び込んでくる。それでいて低音の量感・沈み込みも十分で、ついつい身体を動かしたくなってくる。 「tuki./晩餐歌」もボーカルが生々しく、細かいブレスもリアルに再現され、臨場感あるサウンドに。こちらも低域の存在感が増すので、楽曲全体にも深みが出る印象だった。 低域の量感・迫力が3モデルのなかでトップレベルなので、もちろん「Creepy Nuts/Bling-Bang-Bang-Born」との相性は抜群。またボーカルの中高域も低域に負けないクリアさなので、存分に音楽に身を委ねることができた。 最後に、3モデルとiPhone 13 ProをBluetooth接続してワイヤレスのサウンドもチェックした。音源は変わらずApple Musicを使用している。 PM0.1BDは、有線接続時と比べると解像感が一段下がるような印象で、高域の“シャリ感”が少し気になってくる。PM0.3BDは3モデルのなかで唯一SBCに加え、AACにも対応していることもあり、もっともサウンドがクリア。ギターやベースなどの伴奏音にはほんの少し“シャリ感”が感じられるものの、ボーカルの解像感は有線接続時と比べても大きく変わる印象はなかった。 AT-SP3Xもボーカルのクリアさ、低域の迫力などは有線接続時と比べるとトーンダウンする印象だが、それでも十分音楽を楽しめる解像感・迫力が確保されている印象だった。 ■ 個性の異なる3モデルは“初めてのスピーカー”にピッタリ 今回は4万円以内で買える機種として、3モデルをピックアップしたが、コンパクトながらボーカルと立体感のあるコーラスを堪能できるPM0.1BD、付属品が充実していて箱から出せばすぐに使え、USB接続にも対応しているPM0.3BD、十分な低域で音楽をしっかり楽しめるAT-SP3Xと、それぞれにしっかりとした個性がある3モデルだった。 サウンドとしては、AT-SP3Xは低域の量感・迫力とボーカルなどの表現力のバランスが高い“優等生”的な印象で、万人におすすめできる。ただUSB接続時のPM0.3BDのサウンドが、ボーカルの解像感の高さ、音場の広さなど、個人的には好みだった。 いずれのモデルも、じっくり聴き込むにも、ながら聴きを楽しむにも使いやすい。スマホやPC、タブレットの内蔵スピーカーや、お手軽なBluetoothスピーカーからのステップアップとしても最適なので、充実したオーディオライフの第一歩を、こういったアクティブスピーカーで踏み出してみて欲しい。
AV Watch,酒井隆文