遺族年金が「5年」で打ち切りに!? 50代会社員の夫の死後、妻の平均寿命までに“必要な金額”はいくら? 不足額をシミュレーション
「遺族厚生年金」制度を改正する法案が2024年末までにまとめられる見込みです。改正の骨子は、男女差や年齢差の問題を解消するために、60歳未満で子がいない配偶者が受け取り始める遺族厚生年金の受給期間を、約20年かけて男女とも一律5年にする、という内容です。主に現在おおむね40歳未満の女性は、法改正の影響を受ける可能性があります。 ▼年金「月15万円」を受け取っていた夫が死亡。妻は「遺族年金」をいくら受け取れる? 本記事では、改正法の成立、施行を前提に、夫の死後、妻のその後の支出総額、収入総額、不足する額についてシミュレーションします。
現行の遺族厚生年金と問題点
現行の遺族厚生年金では、「夫の死亡時点で30歳以上の妻」は(再婚などをしない限り)終身で受け取ることができます。「夫の死亡時点で30歳未満、かつ子がいない妻」は(再婚などをしない限り)5年間受け取れます(年金法上の「子」とは、18歳到達年度末までの子、または障害等級1・2級の状態にある20歳未満の子を指します)。 遺族が夫の場合、「妻の死亡時点で55歳以上の夫」は原則60歳から(再婚などをしない限り)終身で受け取れます。「妻の死亡時点で55歳未満の夫」は一切受け取れません。昭和時代の制度設計であり、当時の社会には適合していたのでしょうが、残された配偶者の性別と年齢による給付の格差が徐々に問題視されるようになりました。
遺族厚生年金の改正案
2024年7月末現在の改正案は、5年給付となる妻の対象年齢を、現行の「30歳未満」から「60歳未満」に約20年かけて段階的に引き上げるとともに、「60歳未満の夫」を新たに5年給付の対象とするものです。これらによって「60歳未満で子がいない配偶者は男女一律5年給付」となり、男女差や年齢差の問題が解消されます。 なお、「死別時点で60歳未満、かつ子がいる配偶者」「死別時点で60歳以上の配偶者」「施行日前に受給権が発生している人(すでに受け取り始めている人)」については、現行制度が維持されます。したがって、マイナス方向の影響を受ける可能性がある人は、主に現在おおむね40歳未満の女性といえます。