エルサレム首都問題で孤立化する米国 国際政治の舵取りは他国にシフトか
世界各国でアメリカの決断に批判の声
各国から噴き出るトランプ政権に対する憤りは、外交にも目に見える形で影響を及ぼし始めている。福音派キリスト教徒としても知られるペンス副大統領は、19日から3日間にわたって中東を訪問する予定であったが、ホワイトハウスは出発前日となる18日に副大統領の中東訪問を延期すると突然発表。20日にエジプトのシシ大統領、21日にはイスラエルのネタニヤフ首相とそれぞれ会談を行う予定であった。 ペンス副大統領の訪問延期の理由について、ホワイトハウスは税制改革法案の採決で副大統領の票が必要になる可能性があるためと弁明した。米議会上院(定数100)では賛成票と反対場が同数になった場合には、最終的に議長を兼任する副大統領がどちらかに一票を投じて最終的な決定を行うというルールが存在するが、共和党が過半数を制する現在の上院で税制改革法案がされることは既定路線と見られていただけに、ペンス副大統領の中東訪問延期の理由を法案の採決と信じるには無理があるようにも見える。 そもそもが「歓迎されない訪問」になることが必至で、中東和平における様々なキーパーソンと会談を行うことで、アメリカのコミットメントを国内外にアピールしようとしたトランプ政権の目論見そのものが現実的ではなかったという見方もできる。トランプ大統領はエルサレムをイスラエルの首都と認定するとした6日の演説の中で、ペンス副大統領を中東に派遣し、イスラエルや周辺国の首脳らと和平における協力体制の維持を確認する計画を立てていた。しかし、パレスチナ自治政府のアッバス議長は早々にトランプ政権のエルサレム首都認定に不快感をあらわにしており、ペンス副大統領の報道官は10日にアッバス議長との会談見送りについて認めている。 アッバス議長は22日にパリでフランスのマクロン大統領と会談を行い、フランスを含むヨーロッパ諸国の主導で中東和平を推し進めたい考えを明らかにしている。明らかに中立性を欠く現在のアメリカでは、中東和平の仲介役を務めるのは荷が重すぎるという判断をパレスチナ側が早くも示した格好となった。トランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都として認定すると発言して以降、ガザ地区ではパレスチナ人とイスラエル兵との間で衝突が相次いでおり、25日までに12人のパレスチナ人が命を落としている。