わがマチから“弁護士が消える”地元で相続や離婚の相談ができない…北海道で広がる“司法の砦”崩壊の現実 後任者が見つからず法律事務所が閉鎖
大都市の横浜で1年間、活動した後、北海道留萌市にやって来ました。今から3年前、2021年のことです。 松嶋さんにとって、留萌は、それまでの暮らしで、まったくゆかりのないマチでした。 留萌ひまわり基金法律事務所 松嶋佳史弁護士 「殻つきのウニが、それが1個、そこのスーパーで売っていて。結構350円だか、400円ぐらいで売っていて、もう安い…都心部だとない」 公共施設の指定管理者を決める会議や、いじめ問題の調査委員会など、法律の専門家は、地域行政にとってもなくてはならない存在です。 留萌市役所 総務課 吉田博幸課長 「法的にも、さまざま判断だとか専門的な審査もお願いしていますので、法に明るい専門家がいることは心強いです」 松嶋弁護士が担当するのは、北は遠別町から南は増毛町まで。 時には100kmもの道のりを自ら車を運転して移動。そのマチに暮らす人の困りごとに、耳を傾けます。 松嶋佳史弁護士 「弟さんの同居者?」 相談者 「無理やり入ってきて、ずっと暮らしているんですよね。(建物を)解体したいと思っていて、それで出ていってほしい」 相談者の男性は、介護施設に入った弟に代わって、弟が所有する住宅を解体し、処分したいと考えています。 男性は羽幌町に暮らしていますが、地元には法律事務所がありません。 町役場では解決できず、男性は、羽幌で開かれた無料の法律相談会を訪ね、松嶋弁護士に出会いました。 相談者 「ありがたいよな、っていうか(弁護士は)必要だなって…。手続きが大変難しい、できないんだよ、普通の人では」 留萌ひまわり基金法律事務所 松嶋佳史弁護士 「僕はもう水道とか電気と同じように(弁護士は)最低限のインフラだと思っています。人間らしい生活を送るためには、本当に必要なものだというふうに考えています」
司法は、身の回りに起きた問題を解決するための、最後の砦です。その砦が今、地方から少しずつ崩れ始めています。 ・堀啓知キャスター 法律は、専門的な知識が必要ですから、弁護士への相談は不可欠ですが、高齢化が進んでいる地方で、車で1時間の距離を相談に行くというのは現実的ではありません。 ・森田絹子キャスター 全国的には、裁判手続きのオンライン化も進んでいます。 ただ、取材した松嶋弁護士によると、個人情報が多く含まれた証拠は、情報漏えいの危険から、オンラインで扱うのが難しいことや、高齢者は家にネット環境が整っていない人も多いことなどから、対面での相談が欠かせないということです。 ・堀啓知キャスター 地方だと経済規模も小さいですから、法律事務所の経営環境も厳しい現実があります。 旭川弁護士会では、地方での仕事に興味を持ってもらうため、司法修習生を対象とした“司法過疎”地域でのバスツアーなどを実施しているということです。
北海道放送(株)
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