“学力テスト”市町村別の評価を石川県が公表中止に 教育に競争はダメ? 「勉強で頑張った子を褒めてあげられる場がもう学校にない」
全国学力テスト(全国学力・学習状況調査)でトップクラスの石川県が、今年度から成績の公表を中止するという。同県は2014年から、市や町ごとに県内や全国の平均正答率と比較して、「やや上回る」「下回る」「同程度」などの評価を公表していた。しかし、今年5月の総合教育会議で、委員から「過度な競争につながる」など否定的な意見が相次ぎ、元文部科学大臣でもある馳知事も、公表に否定的だったという。 【映像】学力テスト(2024年度)の上位3県 SNSや教育現場からは賛否の声が出ている。Xでは「テスト対策に追い立てられた学校の現場が正常化する」「テストは強制ではなく、希望者だけでいいのでは」といった意見の一方、「学力は公平な判断基準」「どのみち受験で競争することになる。評価と競争が子どもを伸ばす」との反応も見られる。『ABEMA Prime』では、教育における競争の是非を考えた。
■学力調査の“事前対策”をする学校も 「いびつな状況がある」
石川県教職員組合の橘広行氏は、学力テストの結果公表は「過度な競争」になると指摘する。「行政による『調査』であり、教育施策の見直しや改善を目的としている」とした上で、「結果公表が果たして必要なのか。子どもたちが学力調査に対して、どのような目的意識を持っているかが問われる」と疑問視する。 橘氏ら教職員組合が反対する理由としては、比較によって市町村ごとの競争が起きてテスト用の事前学習・過去問対策をしてしまうことや、成績が悪い子に補習の時間などが生まれ分断につながること。また、学力が学校の学習活動で唯一の物差しになってしまい、子どもがイキイキしていても「学力調査の結果が悪かったよね」と“ダメ”なように扱われる懸念を示す。
すでに県内では「いびつな状況」があるという。「数字が出ると並べ替えたくなり、教育をゆがめる原因となる。ある市は『学力の高さ』で移住を呼びかけている」。また、公表が続けられてきた背景として、「調査する以上は、“説明責任”があると言われていた。行政としては『調査した以上は公表する』スタンスだ」とした。 続けて、「学力調査の結果に大人が一喜一憂して、子どもたちを巻き込むのは問題だ。低いとやはり、教員や教育委員会にはプレッシャーがかかる。その論理の中に子どもたちが巻き込まれている現状だ」と指摘した。