本郷和人『光る君へ』安倍晴明が兼家をおはらいするも効果なし。道長もあの病で目をやられ…平均寿命が35歳に届かないのも当然な<平安貴族の医療事情>
大石静さんが脚本を手掛け、『源氏物語』の作者・紫式部(演:吉高由里子さん)の生涯を描くNHK大河ドラマ『光る君へ』(総合、日曜午後8時ほか)。第八話は「招かれざる者」。倫子(黒木華さん)たちの間では、打きゅうの話題で持ち切り。しかし斉信(金田哲さん)らの心無いことばを聞いたまひろ(吉高由里子さん)は心中穏やかでなく――といった話が展開しました。一方、歴史研究者で東大史料編纂所教授・本郷和人先生が気になるあのシーンをプレイバック、解説するのが本連載。今回は「平安貴族の医療事情」について。この連載を読めばドラマがさらに楽しくなること間違いなし! 本郷奏多さん演じる花山天皇に入内した井上咲楽さん演じるよし子は、そのまま「夜御殿」で…ってそもそも「入内」とは? * * * * * * * ◆平安貴族の平均寿命 前話では、宮中で藤原兼家(段田安則さん)が倒れ、道長(柄本佑さん)ら兄弟が看病にあたるというシーンが描かれました。また、その快癒を祈り、安倍晴明(ユースケ・サンタマリアさん)らによるおはらいも行われました。 あくまで、ドラマ内での兼家の健康状態が今後どうなるかはわかりませんが、実際の兼家は60代で亡くなったとされています。 これは、平安貴族としてはなかなか長寿だったと言えるでしょう。 きちんとしたデータがあるわけではないのでよく分かりませんが、平安貴族の平均寿命は30歳とちょっと、と言われます。少なくとも、35歳には届かない。
◆脚気と糖尿病で苦しむ人が多かったワケ これはなぜかというと、まず幼児死亡率が高いこと。それから、食生活が宜しくなかったようですね。 平安貴族の食事は、けっこうタブーでしばられていた。その一番良い例が肉です。 牛や豚は食べない。食べたとして鳥のみ。それに新鮮な野菜も食べられなかったらしい。その状況で、糖分の高い濁り酒(清酒は戦国時代くらいから)をたくさん飲む。 結果、脚気と糖尿病で苦しむ人が多かった。
◆道長も例外ではなく 藤原家の全盛時代を現出した『光る君へ』のメインキャラクター、藤原道長。 実は彼も糖尿病(当時の言葉だと飲水病)だったと推測されます。 糖尿になると、腎臓とか目をやられる。だから晩年の道長はあまりよく目が見えなかった。 彼の有名な歌に「この世をば我が世とぞ思う望月の 欠けたることもなしと思えば」というものがあります。 実は「欠けたることもなしと思えば=欠けてるかどうか本当はよく見えないや」ではないか、と医師である馬淵まりさんも言ってらっしゃいます。
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