自分をもっと好きになる撮影会:パラアスリートと高校写真部員が考える「障害者への視線」-パラリンピックから3年の東京
東京大会で変わった視線
障害者の意識は、東京パラリンピックを経て変わりつつある。共同通信が大会後の2021年秋に日本障害フォーラムを通して実施したアンケートによると、「大会が自身の障害や障害一般の理解につながったと思う」「ある程度思う」と答えた障害者は70%にのぼった。 「東京パラリンピックの影響はかなり大きかった」。生まれつきの両上肢障害があるテコンドー選手の阿渡(あわたり)健太さんはこう強調する。
「以前は街を歩いていると、ジロジロ見られたり、気持ち悪いと言われたり。思春期のころはそれがとても嫌だった。けれど、東京のパラリンピックはそんな社会を少し変え、障害者に対する社会の温度が変わったと思う。自分も自分のことを好きでいるようになっています」。社会の視線が変わると、障害者の気持ちも変わる。阿渡さんは、そんな変化を実感している。 阿渡さんは、パリ・パラリンピックへの出場は逃したものの、国際大会などへの出場を続けている。
「競技を見てほしい」。盛り上がる撮影会の会場で、モデルとなった選手たちは口をそろえた。パリ・パラリンピック大会は8月28日から9月8日までの12日間。パラアスリートたちは、撮影会の最後にもステージ上で「パラスポーツを、会場やテレビでもっと楽しんで」とPRした。 フォトグラファーの越智さんは、撮影会後のインタビューで、パラアスリートの撮影についてこう語った。 「美しい風景を見て『撮りたい』と思う気持ちと同じように、パラアスリートの美しさ、格好良さを撮ることが大切だと思っている。従来、『障害がある人』に抱きがちだった感情からいったん離れて、競技を楽しみ、選手を知ろうとしてみれば違った世界が見えてくる。パリのパラリンピックも、そういう視点で楽しんでほしい」
【Profile】
松本 創一 ニッポンドットコム編集部チーフエディター。慶応大学文学部卒。北海道新聞に23年間在籍し、冬季五輪、ソウル支局、道庁、札幌市役所、北方領土を抱える根室支局などを担当した。2024年4月から現職。趣味は観劇、街歩き。