自分をもっと好きになる撮影会:パラアスリートと高校写真部員が考える「障害者への視線」-パラリンピックから3年の東京
「格好良い姿を撮ろう」
障害には差別や偏見、「かわいそう」というイメージが付いて回ってきた。多くのパラアスリートもその視線を感じ、苦しんできた。ただ、今回の撮影の場では、そうした障害を「見なかったように振る舞う」のではなく、障害をありのまま受け止めつつ選手の力強さや美しさに注目する姿勢が強調された。 撮影指導はフォトグラファーの越智貴雄さん(45)。2000年のシドニーパラリンピックからパラスポーツの取材を続けている。 「パラアスリートは、例えば膝上を切断した選手が義足で7メートル以上の跳躍を見せるといった、信じられないような結果を出す。ただただ、格好良いじゃないですか」 越智さんは大会の撮影現場では、事前にイメージした構図に近づけるため、地面に寝そべってアングルを極限まで工夫する方法などを説明。「パラアスリートは道なき道を歩み続ける開拓者。その姿を撮影するにはどうするか、考えてみよう」とアドバイスした。
すさまじい技に衝撃
「ガッチャーン」 車いすがぶつかり合う激しい金属音が響き渡る。パリ・パラリンピック車いすラグビー日本代表の橋本勝也さん(22)と中町俊耶さん(29)は、撮影会でタックルを再現した。 高校生デモンストレーターの一人、久留米西高校の本間亜沙子さん(高3)は、車いすが宙に浮くほど激突する瞬間を捉え、「すさまじい技に驚いた」と感動を口にした。 本間さんには障害がある家族がいる。日常的に障害者に向き合ってきた経験があるだけに、心動かされるものは小さくなかった。 「『障害は個性』とよく言われるけれど、障害を持つ家族がいる自分には少し腑(ふ)に落ちていなかった。でもパラアスリートの姿を撮影し、周りの人と同じように個性を輝かせることができるんだ、と初めて思った」
私たちを見て、知ってほしい
国際試合などの経験があるとはいえ、自分に一斉に数十台のカメラを向けられることは多くない。橋本さんは「緊張したけれど、撮影されることが『ちょっと気持ちいいな』と思えた」、中町さんも「競技の時とは違う緊張と楽しさを味わった」と照れた。 2021年の東京パラリンピックは無観客で行われたものの、多くの試合が国内でテレビ中継された。日本はメダル51個の活躍。一般のスポーツ選手と違わない「パラアスリート」としての認知が一段と進んだ。 車いすラグビーは日本各地にチームがあり、そこから選抜された日本代表チームは、パリパラリンピックでのメダルの有力候補だ。2人はレギュラーの一角を占めており、撮影ワークショップの会場からは声援も相次いだ。 生まれた時から両手足に障害がある橋本さんは、中学生のころ、他人の視線を強く気にし、「撮らないでくれ」と思うことが多かった。 だが、今は違う。「たくさんの人に自分の身体のことを知ってほしいという気持ちが強くなっている。大会でいろいろな障害がある人と交流し、自分の体が恥ずかしいものではないと思えるようになった。見られることで、自分自身も障害への理解が深まっていると思う」と認識の変化について語った。そしてその変化をさらに推し進めるためにもパリでも力を尽くすことを誓った。