累計2億個、国内初のインクカートリッジ回収・再生システムを確立したエコリカ
■エコマーク取得やSDGsなど時代の変化が追い風に
――日本ではじめて回収・リユースするシステムを確立したとのことですが、どのような点に苦労しましたか。 宗廣:ビジネス化には量を多く回収しなければならず、その仕組みづくりが大変でした。ゴミとして回収するには自治体の許可を得た車両を使わなければならないなど、制度的な制約があったのです。 そこで考え出したのが、ゴミではなく「製品の原料」として買い取ることでした。エコリカが買い取り、回収に協力してくれた量販店に手数料を支払い、運搬費を含む費用も負担する仕組みです。こうすることで、回収ボックスを置く店舗にインセンティブが生まれます。 純正品メーカーとはライバル関係になるため、市場参入には困難もありましたが「環境に良い製品をお客さまに」と対話を重ねました。こうした想いを理解し応援してくれる量販店の存在は心強く、回収・販売ルートの拡大を大きく後押ししてくれました。 エコリカ製品の品質は純正品とほとんど変わらず、低価格です。印刷処理能力(印刷枚数)や画質は純正品とほぼ同等で、品質保証があり、使用するインクは重金属や発がん性物質が含まれていないかの検査をクリアし、再生インクカートリッジ部門初の「エコマーク認定」を取得しました。 こうして公的な認証を得られたことや、「地球環境大賞」(2009年、2023年)をはじめさまざまな賞を受賞できたことが、エコリカ製品の認知度向上につながりました。さらに、SDGs(持続可能な開発目標)の採択(2015年)で社会の環境に対する意識が高まり、エコリカ製品を採用する企業も増えています。 現在は互換品の販売シェアで約70%、メーカー純正品も含めたインクカートリッジ全体では3位(約10%)をエコリカ製品が占めています。
■企業連合に参加しプラのリユース・リサイクル推進も
――販売した製品1個につき1円を、環境NGOのWWFジャパンに寄付する活動も続けています。 宗廣:2003年の創業当初から続けている取り組みで、23年2月末に累計金額が1億円を超えました。これは社会貢献であるとともに、使用済みカートリッジを量販店まで持ってきてくれたユーザーにベネフィットを還元できないかと始めた取り組みです。 エコリカは、WWFジャパンのサポートで23年11月に発足した「国際プラスチック条約 企業連合」にも参画しています。この枠組みは、企業が日本政府に対して野心的な国際条約の発足を働きかけるために発足しました。エコリカは参画10社で最も小規模ですが、プラスチック製品による環境問題の解決に力を入れて取り組んでいきます。 ――最後に、今後の展望を教えてください。 宗廣:直近では2025年に開かれる大阪・関西万博の「TEAM EXPO2025」共創パートナーになりました。ここで多くの企業や団体とつながり、取り組みを広げる一歩にしたいと考えています。 エコリカは創業以来、公的な支援に一切頼ることなくリ事業を続けて21年になりました。広告などを通して周知にも努めていますが、まだ認知度を上げる必要性を感じています。 世界的に見て日本は多くのプリンターメーカーがあるにも関わらず、インクカートリッジのリユース・リサイクルシステムが確立された社会にはまだ程遠いのが現状です。それが当たり前になるまで、事業を続けます。