恋と食事の関係。イタリアに告白の文化はない。その代わり、まず食事に誘うんだ
イタリア生まれのフード&ライフスタイルライター、マッシさん。世界が急速に繋がって、広い視野が求められるこの時代に、日本人とはちょっと違う視点で日本と世界の食に関する文化や習慣、メニューなどについて考える連載です。 イタリア人マッシの「思考する食欲」
「サイゼリヤの完全攻略マニュアル」(note)でおなじみのイタリア人ライター、マッシさんが、今回はイタリアにおける恋と食事の関係についてお伝えします。
会うのではなく、相手を感じるのがデート
イタリア人の人生に欠かせないのは「食事」の時間だと思われがちだけど、実は違う。美味しい料理よりもっと欠かせないのは、「女性との食事」の時間だよ! 大好きな女性のことを1日中考えて、寝る時も夢に出てくるほどアモーレ(愛)が溢れている。そして、嵐のように心が飛ばされる。そんな時にその女性と食事をすると、人生でこれ以上にない最高の時間になると言っても過言ではないね。 イタリア人の恋愛文化の話に進む前に、大切な現実を言わせてほしい。日本ではあまり考えられないかもしれないけど、イタリアには「告白の文化」がないんだ。もしかしたらなかには告白する人がいるかもしれないけど、今までは会ったことがない。はっきり「付き合ってください」と言わない代わりに、相手の細かいところまで考えて「自分にとって相手がすべて」のようなアピールをすることが多い。日本と違って、付き合った記念日はわからないことがほとんどだから、自分たちで決めるよ。「この辺だったよね?」や「大切な思い出の日にしよう」と話し合うこともある。
イタリア人は、食事をすることで相手のことを知ることができる。だって、美味しいものを食べれば幸せになって、たった一つのテーブルが2人だけの世界になるから! 好きなものを頼んで楽しい会話をしながら食べる、だけではないよ。味覚を情熱に変えて、愛情の種にするんだ! 好きな人と好きな料理を食べれば食べるほど、ますます食欲が増えると同時に相手への愛も膨らむ。さらに自分の愛情は言葉ではなく、行動で表す。誘ったりプレゼントしたりして、「君は僕の中心になっているよ」とアピールする。 そして、どんな些細なことでも褒める。このような行動が相手からも返ってくるようになれば、もう「付き合っている」というサインだ。日本でよく聞く「デート」という言葉は、イタリアに合わない気がする! 「相手と会うこと」より、相手の笑顔や笑い声、存在を1秒でも長く味わいたいという感覚が近い。わかる? 会うのではなく、相手を感じるのよ! 彼女と食事をする時には高級なレストランではなく、ピッツァでもパスタでもアペリティーボ(食前酒)でも、相手が好きそうな料理を考えて誘うこと、連れて行くことが大事なポイントだ。なぜかというと、「相手の好みをわかっている=ちゃんと話を聞いていて相手の言葉にならない部分まで理解している」ということが伝わるから。デートの場所はその最高の証拠だ。だから相手の喜びに繋がるように考えるよ。2人が幸せになるなら、街中の散歩だって最高の時間になる。特別なことなんて必要ない。できるだけ時間を無駄にしたくないから、ありのままで居られるような空間を作るんだ。