<新風・’21センバツ上田西>支える人々/4止 保護者会長・片平知之さん 本気で泣ける試合を /長野
◇寄付金集め奔走、地域の支え感謝 59人の部員が在籍する上田西高硬式野球部。ナインを支える家族も、聖地・甲子園への情熱を胸に日々奮闘している。保護者会長としてチームを支える片平知之さん(48)に、初の夢舞台に挑むチームへの思いを聞いた。【皆川真仁】 2020年10月17日、北信越大会準決勝。星稜(石川)最後の打者が放った打球が、ワンバウンドで上田西エース・山口謙作(2年)のグラブに収まる。山口が丁寧に一塁に送ってゲームセット。初のセンバツ出場を大きくたぐり寄せた。コロナ禍で声援を送れなかった観戦。片平さんは胸に湧き上がる思いをぐっとこらえて、静かに喜びをかみ締めた。「今まで感じたことのない震え。感無量でした」 秋の北信越3連覇を目指す王者を相手にリードを許す展開だったが、負ける気はしなかった。息子・紫温(しおん)(2年)の送迎を兼ねて毎日のように上田西の練習に足を運び、昨秋の公式戦も全試合を観戦。チームの持つ打力も粘り強さも熟知していた。 コロナ禍で甲子園への夢が絶たれた3年生たちの思いも知る。引退の際に保護者へ送るメッセージビデオの撮影係を務めた。一人一人の熱い思いを聞いていると、自然と涙があふれ出した。「みんな『甲子園という夢がなくなって、何に向かえばいいんだと思った時期があった』と(言っていた)。それでも、代替大会に向けて気持ちを切り替えていった姿勢が素晴らしかった。(3年生と)2代分の気持ちを背負っているから、ここぞでの一本が出たんだと思うんです」と現チームの強さの源を見いだす。 日中は地元の中学校で教師を務める片平さん。学校には、保護者会長就任が決まった後の20年2月、「保護者会長になるので部活の主顧問はできません。来年の3月はセンバツに行きます」ときっぱりと伝えた。「野球部のためにできることは何でもやっていきたい」と、会長の任期中はチームの支援に全力を注ぐと決めている。 センバツ出場決定後は寄付金集めに奔走する。多忙な日々だが、地域の人々やOBの支えに心から感謝している。「持ってきてくれるお米にも夢や期待が詰まっている。関わっている人たちの夢を背負っています」。受けた恩を返すべく、来月迎える夢舞台。「試合が終わった後に、勝っても負けても、親も一緒に本気で泣ける試合をしてほしい」と選手たちの健闘を祈る。=おわり