タイパ重視に疲れ…「要領良く効率良く」なくても美味しく作れる「バターシュガートースト」
タイパが大事な子どもたち
2022年の新語・流行語に「タイパ」がノミネートされたのを覚えているだろうか。 「タイパ」とは、時間対効果や時間対効率を意味する「タイム・パフォーマンス」を省略した造語であったが、すでにこの言葉が一般化し、子どもたちの行動にどれだけ影響しているかは、彼らの日常を見ればよくわかる。 【漫画を読む】「はやく要領よく」タイパ重視の世の中に疲れた女性を癒してくれるのは コロナ以降、高校生や大学生にとって学校や塾での録画授業は慣れたものである。彼らはそれを倍速で視聴する。つまらないからではない、「標準」で見る意味がないと言うのだ。 ドラマや映画もしかり。見るべきシーンまで飛ばしたり、倍速で見るのは当たり前。 音楽にしても、イントロから始まる昭和世代の曲とは異なり、いきなりサビ! が多数を占めるようになった。 効率的に時間を使うことは決して悪いことではないが、そうした世の中の流れに心がついていけない時はないだろうか。 先月発売された『星のみえない夜は砂糖菓子につつまれて』(まつざきしおり 著 / オーバーラップ)は、そんな忙しなさに疲れた心に寄り添い、優しく励ましてくれる漫画と砂糖菓子のレシピエッセイ集。 第1話「星降る夜のシュガーバタートースト」では、「はやく」「おそい」「まだ?」「要領よく」と、タイパ重視の毎日に押しつぶされそうになっている会社員が主人公だ。
大きな猫に誘われるがままについていくと…
23歳の会社員 佐藤あゆむの仕事は、真面目で丁寧。「もっとよくできる方法はないか」「これで大丈夫だろうか」と、ひとつひとつきちんと確認しながら進める。 だが、てきぱきとスピーディにこなす社員の中で、あゆむのやり方はマイペースに見えるのか。「真面目で丁寧なのはわかるけど、もっと効率良く、要領良くね」などと声を掛けられる。 同僚が仕事を切り上げて、さっさと帰っていく中、持ち帰り仕事を抱えて、あゆむは自分の要領の悪さに落ち込む。 思い出してみれば、子どもの頃から「早くしなさい」「まだなの?」「要領悪いんだから」「また最後だ」などと言われてきた。 周りのスピードは常に速く感じられ、「もっとがんばろう」「がんばって大人になれば」と努力してきたつもりだったが、大人になっても相変わらず。 周りからつねに急かされ、そうできない自分に罪悪感を持ちながら、生きてきたのだろう。 そんなあゆむの前に、大きな猫が現われる。猫に誘われるまま、星空の中をついていくと、そこにあったのが、「喫茶 星屑」だった。 初めて訪れたあゆむに対し、店主はまるで来ることがわかっていたかのように接する。 甘いミルクティをもらって落ち着いたところに、「あゆむさんのレシピ」なるものを手渡される。それは、シュガーバタートースト。じんわりサクサク、あまいおやつの作り方だった。