もっと知りたい北方領土(7)北方4島周辺水産業の現状 漁船のだ捕や銃撃も
終戦から71年経過しましたが、いまだに解決していないのが、不法占拠されたままとなっている北方領土の問題です。ことしは、平和条約締結後に歯舞群島、色丹島の引渡しを決めた1956年の「日ソ共同宣言」からちょうど60年の節目になりますが、まだ平和条約も、北方4島の返還も実現していません。そうした中、9月に行われた日露首脳会談で、12月にプーチン大統領の来日が決まり、領土交渉の進展が期待されています。 あらためて、北方領土とはどんな場所なのか、どのような自然や産業があったのか。どのような生活を送っていたのか。そして、4島をめぐる今の人々の思いなどを、紹介していきます。 第7回は、北方領土周辺海域での水産業の現状です。
北方領土付近の水域は、冷たくて栄養分が多い千島海流(親潮)と温かい対馬海流が出合ってプランクトンが大量に発生し、それを目当てに多くの魚が集まる好漁場とされています。おもな水産資源は、コンブ、サケ、マス、タラ、スケソウダラ、タラバガニ、ナマコなどで、戦前は、4島および周辺水域を舞台に、これらの漁や水産加工業を含む水産業がさかんに行われていました。 戦後になると、北方4島を実効支配した旧ソ連が、周辺海域で操業する日本の漁船を領海侵犯などの理由で取り締まりはじめました。北海道水産林務部水産局漁業管理課がまとめた北方領土周辺水域における被だ捕状況によると、1946(昭和21)年からことし9月末までに、だ捕された船は1301隻、だ捕された人数は9011人となっています。最も多かった日ソ共同宣言の1956(昭和31)年は、だ捕された船は89隻、だ捕された人数は677人にのぼりました。
こうしたトラブルを避け、北方4島の海域で日本の漁船が操業できるようにするための協定が両国の間で締結されました。水産庁資源管理部によると、日ロ間の漁業協定のうち、北方領土に関わるのは、(1)「日ソ地先沖合漁業協定」、(2)「北方4島周辺水域における日本漁船の操業枠組み協定」、(3)「日ロ貝殻島昆布採取協定」、の3つです。 (1)「日ソ地先沖合漁業協定」は、両国がお互いの200カイリ水域(排他的経済水域)で漁をできるようにする取り決めであり、1984(昭和59)年に発効しました。両国が採れる魚種と漁獲割当量は、毎年両国の関係当局が協議して決められています。今年の漁獲割当量は、両国とも約6万3456トン、日本が採れるおもな魚種はサンマ、イカ、マダラ、スケトウダラとなっています。割当量は有償による追加も可能で、日本側は約3370万円をロシア側に支払って約1045トン分を加えています。 加えて、日本側は、水域の資源管理という名目で、協力費(2016年は約4億1814万円)をロシア側に支払っています。実際は、金銭ではなく協力費に相当する試験機器などを渡します。この協力費、ロシア側は支払っていませんが、水産庁によると、両国の漁獲割当量は同じですが、毎年日本側の方が、漁獲量が多いのが実態のため、とのことです。