アジア民主活動家の海外避難を支援 一橋大に事務局設置し制度化、日韓などで受け入れへ
民主主義擁護を目的とする研究者団体「サニーランズ・イニシアチブ」は15日、東京都国立市の一橋大で記者会見し、アジアの国・地域で抑圧される民主活動家を海外避難させるプログラム「デモクラシー・アドボケイツ・アット・リスク(DAR)」を立ち上げたと発表した。一橋大に事務局を置き、日本や韓国など複数の国で研究者や留学生として受け入れる。 ■日本をハブに保護の動き拡大 同団体はインド太平洋地域の大学やシンクタンクの研究者でつくる会議体。団体によると、アジアには民主活動家を保護する学者らが約100人いるが、制度化した枠組みで保護するのは今回の取り組みが初めて。 これまで活動家はアジアでの避難情報を得るのが難しく、欧米に避難する人が多かった。プログラムでは日本をハブ(拠点)として保護の動きを広げ、よりスムーズな避難支援を目指す。 近年、軍政下のミャンマーや民主派摘発が続く香港、言論弾圧の強まるカンボジアなどで政治家や記者、研究者の弾圧が相次ぐ。だが、各国政府は外交関係の悪化を恐れてこうした民主活動家の支援をためらう傾向があり、アジアには支援の枠組みがなかった。 ■「まず生き延びなければ」 プログラムでは一橋大の事務局が支援要請を受け、各国の受け入れ先に橋渡しする。現在、8カ国・地域(日本、韓国、台湾、モンゴル、フィリピン、インドネシア、タイ、インド)の研究者ら計25人が受け入れ先として登録。民主活動家は教授や学生といった資格で査証(ビザ)を取得の上、現地の大学などで数年間活動する。 すでに東南アジアと南アジアの計3人から支援要請があり、今後は年間10人程度の受け入れを目指す。近くホームページも作り、活動を本格化させる。 記者会見した一橋大の市原麻衣子教授は、権威主義国で自由や民主をもたらし得る民主活動家は「まず生き延びなければならない」と強調。資金調達や海外避難時のビザ取得を課題に挙げ、「政府や関連機関にも協力してほしい。将来的にアジアの大きな枠組みに発展させたい」と話した。(桑村朋)