日本人と外国人「脳機能の違い」はある? リスナーの素朴な疑問に茂木健一郎が脳科学の視点で回答
脳科学者の茂木健一郎がパーソナリティをつとめ、日本や世界を舞台に活躍しているゲストの“挑戦”に迫るTOKYO FMのラジオ番組「Dream HEART」(毎週土曜 22:00~22:30)。 TOKYO FMとJFN系列38局の音声配信プラットフォーム「AuDee(オーディー)」では、当番組のスピンオフ番組「茂木健一郎のポジティブ脳教室」を配信中です。この番組では、リスナーの皆様から寄せられたお悩みに茂木が脳科学的視点から回答して「ポジティブな考え方」を伝授していきます。 今回の配信では「国ごとの脳機能の違い」に関する質問に答えました。
<リスナーからの相談>
最近、海外から日本を訪れるインバウンドの方が多いですね。考え方や文化などの違いはあれど、同じ人間ということは変わりませんが、脳の機能に違いはあるのでしょうか? また、日本人は脳のどこが発達しているのかを茂木さんから聞いてみたいです。
<茂木の回答>
茂木:日本人特有の脳の使い方として、かつては日本人は虫の声を「音色」として聞くけれど、海外の方は「ノイズ」として聞くというようなことが言われたりもしました。しかしながら、最近の脳科学の研究によって、そういった明確な差はむしろないとわかりました。 たとえば、男の脳と女の脳がよくメディアで言われたりするのですが、性差よりも個人差のほうが大きいです。あまり男性脳・女性脳という言い方もしないですし、脳科学の世界ではそういった研究があまりおこなわれていません。ですから、日本人脳とか外国人脳というのも実はないのです。それよりも個人差のほうが大きいです。 たとえば、日本人は会うとお辞儀をしたりしますよね。外国の方だと握手したりハグしたりするという、行動の差があります。これはどちらかというと脳の差というよりは文化の差です。脳の形態とか神経細胞の機能自体は変わりませんが、それをどう使うかということで文化の差が生まれるということです。 ですから、日本人のご両親から生まれた方でも、アメリカで育ったらアメリカ人のような脳の使い方をするわけです。イメージの話で言うと、脳というハードウェアにどういうソフトウェアをダウンロードするかというのが文化によって違ってきます。そして、ソフトウェアというのは人といろいろやり取りするなかでいくらでも変わっていけるし、個人差もあります。インバウンドでいろんな方がいらしてますけども、いろんな文化に接するいい機会なのかなと思ったりもします。 私は仕事柄よく外国に行くのですが、ちょうど車の運転で右側通行か左側通行か判断するのと同じように、瞬時に切り替えるようにだんだんとなってきました。同じ脳でも複数のソフトウェアを切り替えることもできるのですね。そのときに働いている部位が尾状核(びじょうかく)です。この部位は、バイリンガルの方が日本語と英語を切り替えるときにも使われているということがわかっています。 相談者さんも、ぜひいろいろな文化に触れていろんな自分の脳の使い方を試してみてください。また、それを切り替えることも楽しまれるといいのかなと思います。 (「茂木健一郎のポジティブ脳教室」配信より)