パガーニ新型「ユートピア」をドライブ! 開発コンセプトはマツダ「ロードスター」の世界観…V12をMTで操る一体感は興奮と感動がいっぱい!!
「軽さの正義」を実感する加速レスポンス
最新ハイパーカーとしては異例の3ペダルMT車。けれどもその扱いに意外や気難しさはまるでなかった。むしろ手足を駆使して数億円のハイパーカーを操るという行為そのものに対する緊張を山道に差し掛かる前にいかにしてほぐしておくか。そのほうが問題だ。隣に座ったテストドライバー氏とクルマ以外の他愛もない会話(この辺りで美味しい店教えて! とか)でほぐしていくしかない。 田舎の古い街並みを抜ける。道は荒れている方だが乗り心地の良さにまずは感動した。ウアイラよりはっきりとコンフォート。車内の景色からしてそうなのだ。それでいて車体そのものは以前よりいっそう引き締まって、一体感も増しているように感じる。 街を抜けると丘陵を縫うように走るオープンロードに入った。覚悟を決めてスロットルを開けてみる。V12エンジンの咆哮が後頭部から脳内をつんざき、パワートレインの振動が腰と尻を刺激して、メカニカルノイズが全身を奮い立たせる。そして車体そのものは鞭を打たれた駿馬のように反応した。その加速レスポンスは驚くほど瞬発的で、これが“軽さの正義”だと実感する。 タイトヴェントでのノーズの動きは、まるで上半身がフロントアクスルと一体となって動いていたかのようだ。フロントの両輪をつねに両腕で抱えて動かしているような感覚がある。その動きはいたって正確で、狙ったラインにフロントタイヤを自由における。ある程度、速度をあげてもまるで変わらないからさらに驚く。いやはや驚きっぱなしである。 だんだんとアベレージが上がっていった。狭い道でのトラックとのすれ違いでもためらわずに抜けていけるようになる。これほどのマシンでありながら、身体に馴染む速さといったら! マニュアルギアボックスの美点でもあるだろう。やっぱり機械は自分で操作してナンボ、である。 あっという間に約束のテスト時間を終えると、背中がぐっしょりと濡れていた。空調が効かなかったわけじゃない。むしろよく効いていた。そうではなく興奮と感動の汗だ。最近のスーパーカーの中でもなかなか得難い経験である。 ちなみにパガーニ社の生産規模は年産最大50台という。ユートピア ベルリネッタの生産台数は99台に限定されており、取材当時(2024年7月下旬)には44台目が完成間近であった。一度に8台の生産がオーガナイズされ、すでに40台以上が仕上がっている。顧客へのデリバリーも開始した。3ペダルマニュアルのオーダーが半数以上。また先だって開催されたモントレー・カーウィークでは待望のロードスター(限定130台)も発表された。
西川 淳
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