「至福」のレストラン列車 シンガポールとの異色コラボの狙いとは…
【汐留鉄道倶楽部】「乗り鉄」として乗ってみたいけれども、実現できていない垂ぜんのプチぜいたく列車がいくつかある。その一つだったのが、首都圏の大手私鉄、西武鉄道が運行するレストラン列車「西武 旅するレストラン『52席の至福』」だ。2025年1月~3月にシンガポール創作料理を提供するコースの開始を控えて乗車すると、異色に思えたシンガポール政府観光局とのコラボレーション(協業)の狙いが見えてきた。 【写真】「命だけは助かった」でも…残された荷物はどうなった? 事故の翌朝、JALの専用ダイヤルから着信が 「お見舞金と荷物の補償分は…」と 航空機炎上事故のその後
16年4月に営業運転が始まった「52席の至福」は東京都心部の西武新宿駅または池袋駅と西武秩父駅(埼玉県秩父市)の間を走り、移動中に有名シェフらが監修したこだわりの料理を堪能できる。1988年に登場した電車4000系を改造した4両編成が、土曜・休日を中心に年間100日程度運行している。 建築家の隈研吾氏がデザインした列車の外観は秩父の四季をイメージし、2号車と4号車には乗客が食事を楽しめるように大きなテーブルを挟んで2つまたは4つの座席を設けた。これらの座席の52席で至福の体験ができるというのが列車名の由来だ。3号車は食事を用意するキッチン車両になっており、1号車はイベントなどに対応する多目的車両となっている。 今回の料理内容とは異なる「特別企画運行」に、西武秩父から西武新宿まで乗った。待ち受けていた列車の扉の前ではスタッフが出迎え、プラットホーム上に赤いカーペットが敷かれて乗客の気分を高揚させる。乗車口は客席がある2号車と4号車の二手に分かれており、この時に自分の誤解に気づいた。
52席の至福は1号車に「ハート」のマークを付けるなど車両ごとに異なる柄をあてがっており、私はこれらが春夏秋冬を表しているトランプの4種類の記号と同じマークだと信じ込んでいた。 ところが、私が乗車する2号車は四つ葉の「クローバー」になっており、トランプの三つ葉とは異なる。「スペード」をあしらった4号車も水の形をしており、3号車の「ダイヤ」も紅葉をイメージしたデザインになっている。 乗客は四つ葉のクローバーならば2号車、水ならば4号車だと覚えておけば良さそうだ。車両側面の裾の部分に記号のイラストが描かれているため、それを見れば自分が乗るべき車両を確認できる。 2号車の扉から乗り込むと、渓谷などの自然をモチーフにデザインしたという車内は実に落ち着いた雰囲気だ。入り口のデッキと客室の仕切りには秩父地方の伝統工芸品である織物「秩父銘仙」をあしらい、天井は柿渋和紙で装飾するなど沿線「推し」を欠かさないものの、空間に見事に溶け込んでいた。