大谷翔平「54-59」達成で賞賛すべき「ムーキー・ベッツ」の献身 1番バッターが盗塁王争いに絡むと「2番は本当に神経を使います」との指摘も
「チームの勝利が最優先」
ベッツは8月12日のブルワーズ戦で復帰を果たしたが、打順は2番、守備位置はライト。開幕時とは大きく異なっていた。ベッツに責任があるはずもなく、チームの事情に振り回された被害者だったと言っていい。ベッツが首脳陣に抗議しても、誰もが当然だと思っただろう。だが、彼はそうしなかった。 「カルフォルニアの地元紙として知られる『オレンジカウンティ・レジスター』という新聞があります。ドジャースの番記者が打順とポジションの問題でベッツ選手を取材し、そのコメントがXに掲載されました。ベッツ選手は自身のポジションよりドジャースの勝利が最優先であり、1番は大谷が担うべきと明言したのです。チームへの献身を明確にしたことで、全米の野球ファンから称賛が殺到しました」(同・記者) メジャー研究家の友成那智氏は「本当にベッツ選手にとって今季は大変なシーズンだったと思います」と言う。 「2000年代、メジャーで活躍していた2番バッターにインタビューしました。事情があって双方の名前は伏せますが、その時の1番バッターが常に盗塁王争いに食い込む選手でした。私が2番バッターに『大変ですか?』と質問すると、驚くほど率直に『邪魔で、やりにくいです』と即答しました。確かに最低でも1球目や2球目は待ったり、空振りしたりする必要があります。ましてベッツ選手は基本的に1番を担ってきました。バッターにとって打順が変わるだけで相当な負担ですから、ベッツ選手は復帰後、神経を使うことが増えたはずです。しかし、それを表に出すことはありませんでした」
ベッツ選手の苦労はいつ終わる?
メジャーリーグでは2023年のシーズンから、盗塁を有利にするルール変更が実施された。具体的には投手が牽制球を投げる、もしくはプレートから足を離す行為は1打席につき2回と定めた。3回目の牽制球は投げても構わないが、1塁ランナーをアウトにしなければボークと判定される。さらに1塁、2塁、3塁のベースを一回り大きくした。 「ルール変更からも分かる通り、積極的に盗塁を仕掛けることは正しい判断です。おまけに大谷選手は盗塁の成功率を飛躍的に上昇させました。エンゼルス時代は70%台だったのに対し、今季は90%を超えています。誰も大谷選手の盗塁に異議は唱えられません。ベッツ選手も何の不平も口にせず、大谷選手が盗塁するのを黙々とサポートし続けました。大谷選手が『54-59』を達成した最大の功労者はベッツ選手と言って過言ではないと思います」(同・友成氏) 一部の専門家は「大谷選手は早いカウントで盗塁していた」と擁護したが、友成氏は「それは事実でも、ベッツ選手は早いカウントで打つことも多い」と指摘する。やはり、本音ではやりにくかっただろう。ベッツ選手も俊足で、通算188の盗塁を記録している。2番バッターの気持ちが初めて分かったかもしれない。 「今季は大変だったベッツ選手ですが、来季は朗報が訪れるかもしれません。大谷選手が投手に復帰すれば、さすがに1番バッターは負担が大きすぎます。あくまでも私の予想ですが、来季は1番がベッツ選手、2番がフレディ・フリーマン選手、3番が大谷選手という打順になるのではないでしょうか。つまり来年のベッツ選手はリードオフマンとして、心置きなく打撃と盗塁で大活躍できると考えています」(同・友成氏)