建築に「テント素材」でCO2排出量が大幅削減 ヒントは炭鉱用の素材!? 特殊な軽量素材を用いる「膜構造建築」とは
もともとは炭鉱用の風管メーカーだった山口産業(佐賀県多久市)は、建築業界へと業態を転換。培ってきた技術を活用した特殊な軽量素材を用いる「膜構造建築」で工場倉庫や公共施設の建築を手がけ、その特性を活かして従来工法と比べCO2排出量を大幅に削減できることを実証した。環境への配慮と事業成長の両立について、製造部長の山口信之さんに聞いた。(聞き手 SDGs ACTION!編集部・池田美樹) 【写真】スポーツ施設、歩道橋から牛舎、トートバッグまで……こんなところにも「膜構造建築」が!
炭鉱用の風管から膜構造建築へ
――主に「膜構造建築」を扱っています。どのようなものですか。 私たちは、佐賀県多久市に本社を構える膜構造建築のメーカーです。膜構造建築とは、建築物の屋根や壁に、「柔らかい繊維に樹脂をコーティングした特殊な軽い材料」を用いる工法のことです。「テント素材」というとイメージしやすいと思います。これを使った製品を設計、製造、施工しています。 昭和の時代の多久市は、炭鉱で栄えた町でした。その炭鉱向けに、テントで使われるような柔らかい材料を使って、空気を送り込むための「風管」(エアパイプ/ダクト)を作り始めたのが、山口産業の創業のきっかけです。 その後、炭鉱が閉山して需要が低下していく中で、今まで培ってきた製品や技術、従業員を守る必要がありました。 そこで全国を見回したところ、同じような材料を使って建築をしている会社があることがわかり、思い切って製品をシフトチェンジして、建築の世界に入っていきました。 ――山口さん自身は、会社でどのような立場なのですか。 製造部門に所属しており、主に生産管理や生産計画の部分、部署全体のマネジメントを担当しています。 大学卒業後、1年ほど海外に留学して、日本に戻ってから山口産業に入社しました。最初は製造部門ではなく営業部門に配属され、仙台営業所の立ち上げに関わりました。3年間、仙台営業所にいて、その後佐賀に戻ってきて10年経ちます。 大学生のころは実家が経営している会社に入ろうという気持ちはあまりなかったのですが、留学後に入社することを決めました。それから膜構造建築のことがどんどん好きになって、今ではどっぷりハマっているという感じです。