アーティストはSNSをやるべき? 竹田ダニエルとSKY-HIが語るインターネットとの関り方。
「カルチャー×アイデンティティ×社会」をテーマに様々なメディアで執筆、BMSG所属アーティストの活動にも携わる竹田ダニエルさん。 BMSGを立ち上げ、数々のアーティストを世に送り出し、既存の音楽業界に新しいカルチャーを作り出し続けているSKY-HI(日高光啓 ※高=はしごだか)さんとの対談が実現! 私たちの生活の奥深くまで浸透しているSNSとの付き合い方を、竹田ダニエルさんの最新刊『SNS時代のカルチャー革命』に収録されている対談より、一部抜粋してお届けします。(読みやすさのため、改行などを編集しています。)
SNSを通してぶつけられる感情
竹田:日高くんはアーティストとしてキャリアも長くて、SNSがある前からブログを書いていたし、SNSが台頭してきてからも、自分の言葉で発信を続けてるよね。今はBMSGの社長として他のアーティストを抱える立場でもあるわけだけど、その所属アーティストたちもそれぞれSNSの発信の仕方も違えば、戦略も違う。日高くんはずっと当事者として見ているから、そのことについて今日はひとつメインで聞きたいなって思っていました。 SKY-HI:今は自分の主語がどんどん大きくなっていくように思うかな。大きな会社と契約して、そこに所属するという形をとっていた状態のときは、自分の自意識っていうのに全然変わりはないというか、中学生のときと変わらない主語のままでやれていた。でも、会社を作って法人格を持ってそれが成長していくと、個人格と法人格に絶妙な差異があるなと思います。 法人格が大きくなると、所属アーティストに飛んでくる石を代わりに請け負うことができる。人間って感情で動くじゃないですか。SNSで何かしらネガティブな発言をする人って、何かを言いたい(言ってやりたい)っていう感情があって、それに適した言葉を自分で適当に見つけてぶつけてくるので、言葉自体はすごく支離滅裂だったり全然筋が通ってなかったりします。 感情が生まれちゃっている以上、その感情をぶつけられるのはしょうがないと諦めています。その分プラスの感情を投げていただくことも多いですし。感情を高揚させることができるからこの職業があるので、その分その逆側に振れたネガティブな感情をぶつけられるのは、ある程度の業として受け止めてはいます。 でも、生身の人間が受け取るには、ちょっと数や量、質が大きすぎて、あまりにもキツいんですよね。それによって、自分たちを応援してくれている人たちも含めて、全員が敵に見えてしまうといったこともアーティストの人生ではざらにある。法人格が大きくなれば、その投げられる石を全部、アーティストたち本人じゃなくてBMSGとかSKY-HIとして受け止めることができる。そうすると、石をぶつけられても、「彼らのために耐えるぞ」とアーティストを守るというある種の喜びに変わることも増えました。同時に、自分が発信することが彼らを含めた全体の意思として見られる可能性も増えてくるので、慎重になり……もっと言うとメリットを感じなくなり、発信をやめていく方向になりがちな気がしますね。リアルでやるべき事もあまりにも増えたし。 竹田:そういう違いもあるし、インターネット自体の変化もあるよね。 SKY-HI:確かにそうだね。