アーティストはSNSをやるべき? 竹田ダニエルとSKY-HIが語るインターネットとの関り方。
そもそもSNSはやるべき?
竹田:例えば、日高くんがAAAとして活動していたとき、SNSがまだなかったときのファンとの付き合い方は今とは違ったと思う。ブログで発信していたのも、今のSNSで発信するというのとは全然意味合いが違うと思うし、特にSNSの発信に関しては、アーティストとしてやらなきゃいけないことが、良くも悪くもかなり増えたんじゃない? SKY-HI:確かに変わったとは思う。変わったんだけど、アーティストに限らず、人間がその変化に合わせなきゃいけないとは必ずしも自分は思っていなくて。どちちかというと、選択肢が増えたという風に考えたいなという感じかな。 SNSからリーチを増やせるというのは確かだから、その目的のために使っていきたいという人がいたら、それを止めはしないですが、今はSNSを利用する時代だからやらなきゃいけないのかなっていう人に関しては、無理してやらなくて良いんじゃないかなって。アーティスト本人がどこまで背負うべきなのかっていうことは、ちょっと考えますね。 あんまり好きじゃないんです、ブランディングっていう言葉も本当は。最終的にはアーティストが人間として、自分がありたい自分でいることができて、その姿でそのまま生きることができる状態が理想なはず。うちの所属アーティストたちはもちろんですが、そうではないアーティストの方ともいろんなところでお会いしますが、みなさんとても素敵なんです。みんな違ってみんな素敵で、みんな良いから、そのまま生きてそのままいられればいいと思うし、そのままでいられるように、「とは言ってもさ」となる部分をなくしていく作業がマネジメントのやるべきことなのかなっていう気がします。 BE:FIRSTも結成当初、みんなSNSをやりたがっていました。そりゃ自分のアカウントを作って注目されたい気持ちもわからなくはない。でも、SNSをやることがどれだけ面倒くさいか、余計なことが増えるのか、やらないとどれだけ幸せかっていうことを切々と説いていたら、やらないのが正解だね、と皆の方からなりました。 そういえばこの前、海外アーティストとのお取り組みの中で、SNS上で一部のファンからネガティブな声が上がるということがありました。お取り組み先とも、本来お互いにごめんなさいを言うことでもないとは理解し合いつつも、お互いに負荷と心労のかかる事態になってしまって。結構問題として捉えられていたし、自分もそれなりにはダメージを食らってたんですが、BE:FIRST本人たちにそのことを話したら、メンバーの半分はそういうことがあったっていうこと自体を知らなかった。そのとき、わかってはいたけど、SNS上での炎上や問題って本当に一部の人しか知らないことなんだな、という感じが改めてしたかな。 知りたい人が自分で調べる中で、こういうことがあるんだと知ってしまうのは別に良いと思うんですが、それをわざわざ意識しなくても、普通に生きていれば周りにいる人が自分のことをどう思っているかを知るのには限界がありますよね。そんなことを気にするよりも、自分が自分のことをどう思っているかとか、自分がありたい自分でどう生きていけるかの方がはるかに大切です。特にアーティストは自分自身と会話する時間が本当に必要で、そこに向き合う時間はいくらあっても足りないくらいなので、SNSがあると自分と会話する時間が減っちゃいますし、ないならないだけ良いなとは改めて思いました。 竹田:日高くんは昔のブログとかを経て、今はArchitect(BMSGが運営するオンラインサロン)で、そういう話をある種の「内部」に向けてしているよね。すごく濃厚な文章を発信していて、それを一部の会員が見ることができる。そういうファンとの距離感の作り方も新しい試みだったように思います。 SKY-HI:自分の経験談でいくと、ファンの人もネガティブなことは言うし、アンチの人もポジティブなことは言うんです。自分の何かしらのポストに対してつけられる反応が好意か好意じゃないかは、ぱっと見たらもちろんわかる。でも、ネガティブなことを言われたりポジティブなことを言われたりを繰り返しているうちにその境界線が曖昧になってきて、好意的なポストも全部アンチズムに見えるし、ネガティブな投稿があると逆に安心するみたいなこともあって、もう誰がどのくらい自分のことを応援してくれているのかがわからなくなってしまう。 普通の生き方をしていたら、「別にそんなもんでしょう」ですむのは間違いないんだけど、どうしても数字がついてまわって。数字を意識せざるを得ない職業でもあったから、それがすごく苦しくて。最低限、月額会費として安くはない金額を払っている人たちであれば、その発言がポジティブであろうがネガティブであろうが、相当な熱量で応援してくれているのは間違いないですよね。どれだけ強いアンチであっても、その金額を払っている人であれば、もはやアンチではないのでは、と。やっぱり一定数アンチの人は入ってきます。何か足を引っ張ってやろうみたいな形で入ってくるんですが、入った時点でそれはもう、残念なことにアンチではなくなるんです(笑)。もはや応援されている行為でしかないし実際とても助かるので、割り切れる部分もあるように思います。 【つづき】「人類にインターネットは早すぎた? 竹田ダニエルとSKY-HIが語り合う、議論の重要性。」(1月10日公開)では、変容するインターネットとの付き合い方、議論することの楽しさについてお二人が語り合います。 気になる対談の全容は、竹田ダニエルさんの最新刊『SNS時代のカルチャー革命』にてお楽しみください!
竹田 ダニエル、SKY-HI