【あなたらしく、わたしらしく―男女共生はいま―】M字カーブ 育児の傍ら学び就活 預け先確保ハードル高く
旋盤を細かく調整し、寸分の狂いもなく金属を削る。福島県いわき市の江名製作所。1歳の子を育てながら正社員として働く斎藤彩佳さん(35)は、大型船の部品を完成させ、納得の表情を浮かべた。 2021(令和3)年6月に結婚を機に学習塾の事務職を辞め、今年1月に製作所に採用された。乳幼児を育てながら職を探すのは苦労の連続だった。 女性の就業率は子育て世代の30代後半で落ち込み、40代以降は回復するM字カーブを描く。再び働き始める際、非正規雇用に流れる割合が高く、男女の賃金格差を生じさせる。斎藤さんもパートを選ぼうとした。しかし専門的な技術を身に付け、「私らしく働ける」仕事にこだわった。 ◇ ◇ 斎藤さんは夫と子どもの3人暮らし。老後の蓄えや教育費のために、昨年春から職を探し始めた。 子どもと接する時間を大切にしたいと、まずは在宅ワークを希望した。ただ、目の離せない乳幼児を抱え、仕事との両立は厳しいと判断した。パートとして働きに出ようとも考えたが、収入よりも保育料が高くなる恐れがあり、断念した。
そんな時、福島職業能力開発促進センターいわき訓練センター(ポリテクセンターいわき)の説明会で無料託児サービスを知った。講義中、センター委託の託児所に子を預けられる。お菓子作りが好きで、試行錯誤を繰り返してものづくりに励むのが好きだった。「楽しいと思える仕事に出会えるかもしれない」。一念発起して受講を決めた。半年間にわたり、機械加工の技術を学んだ。 「勉強に集中できた」と振り返る。一方、サービスは受講中に限られ、企業の面接の際には子どもの預け先の確保に奔走した。両親とは別居しているからだ。 面接対策のために買い込んだ教本の模範解答には、「子どもが急な熱を出した場合、親族に面倒をみてもらいます」とあった。子守をしてくれる親族がいないと面接で不利になるのか―。女性が活躍しにくい現状に違和感が残った。 幸い、現在の職場は子どもの都合に合わせて休みを取りやすい。「働きたい意欲はあっても行動に移せないお母さんが多いのではないか」と話している。