新生「アレキサンダー・マックイーン」初披露 35歳のマクギアーが考えるアウトサイダー
「アーカイブが別の場所に移設されていることもあり、本格的に掘り下げる時間はなかった」とマクギアーは明かしたが、「アレキサンダー・マックイーン」らしさは随所に見られる。ブランドに欠かせない強いショルダーラインのテーラリングは健在。着用者にもストイックさが求められたこれまでより少し柔らかでルーズなシルエットもあり、ロープ状のベルトを巻いてウエストやアームを絞ったり、全体に黒のストーンをちりばめたりしたデザインが目を引く。また、ウィメンズのスリムなロングチェスターコートは、水平に飛び出した肩からフレアの袖までの有機的なラインが特徴。メンズはスーツに鮮やかな色の開襟シャツを合わせたり、レザーコートに同素材のフェドーラハットを合わせたりして、ギャングスターのようなイメージを醸し出す。テーラリングのアクセントとして背中にあしらわれたのは、小さなメタルバー付きのチェーン。これはリーが手掛けたスカートから引用したもので、サイズを拡大してアクセサリーのデザインにも生かされている。
そして、リーのクリエイションに見られた“動物性”は、コンパクトなジャケットから飛び出すボリュームたっぷりのシアリングベストやジーンズの前面にシアリングのラインをあしらったデニム、馬蹄や尻尾のついたショートブーツで垣間見せる。英国の伝統的なニットの表現では、ケーブル編みとハニカム編みを組み合わせ、端をラフに仕上げたジャケット、ブラトップ、スカートのセットアップなどを提案。ハンマーで叩いたスパンコールをびっしりあしらったり、砕いたシャンデリアと自転車のリフレクターの破片を縫い付けたりしたドレスは、破壊的なエレガンスの彼ならではの解釈ととれる。
コレクションには、極端なボリュームでデフォルメしたローゲージニットや、整備士である父との子供の頃の会話にちなんで“ランボルギーニ・イエロー”や“アストンマーティン・ブルー”で彩ったモールド成形のメタルドレス、長い袖がつながって垂れるフルイドなドレスなど、コンセプチュアルなアイデアも多く見られた。これまでの経歴(「ユニクロ(UNIQLO)」のクリストフ・ルメール(Christophe Lemaire)のチームや「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」そして「JW アンダーソン(JW ANDERSON)」など)を考えると、彼にはリアリティーのあるデザインとのバランスを取る力もあるはずで、ショーピースのアイデアをどのようにコマーシャルピースで打ち出していくかも気になるところだ。