大谷翔平とベッツ、孤立なく並び立った2人…深まった絆、個人より勝利追求
雌雄を決したワールドシリーズ第5戦の試合後。ヤンキー・スタジアムのグラウンドに表彰式のために即席でつくられた特設会場の壇上で、大谷翔平とベッツはガッチリと抱き合った。どちらも押しも押されぬスーパースターだが、2人は孤立することなく、チームの勝利だけを追求した。 ドジャースは大谷、ベッツ、フリーマンを筆頭にスター選手を多く抱えるが、不協和音は聞こえてこなかった。シーズンが深まれば深まるほど、チームの協調性は高まった。その一助となったのは、ベッツの献身性だった。ドジャースを長く取材する記者の一人は「ベッツがああいう性格でなかったら、うまくいかなかったかも」と語る。 ベッツは、チームの要求を全てのんだ。今季は二塁のコンバートを受け入れてスタートしたが、球団はラックスの送球難の懸念から方針を変更。ベッツを遊撃手に回した。6月中旬に左手を骨折し、2カ月戦列を離れると、その間、ベテランのロハスが遊撃手として安定。すると、ベッツは復帰後、右翼に戻った。打順も愛着のある1番から、離脱中に「1番・大谷」が定着すると、2番を受け入れた。不満もあったかもしれないが、「自分は勝利の手助けがしたい。それだけだ」と飲み込んだ。 大谷との絆の深まりも感じた。シーズン終盤の9月、ポストシーズンの10月には、大谷に対して素直な感情が口についた。9月22日、ロッキーズ戦の9回に大谷の同点弾、自身のサヨナラ弾で逆転勝利した時は「だから翔平は7億ドルを稼ぐんだ。明らかに彼が引っ張っているし、僕らはただ、彼をサポートしていくだけだ」。 ポストシーズンでは、大谷が走者がいない場面で打てないことを問われると、「彼はフィールドで最高の選手だ。走者がいない場面で打っていないなんて、誰が気にするんだ」と擁護。そして、「彼が打席に入るたびに誰もが彼のことを知っていて、何かが起きると期待する。それが問題だね。彼は何度も期待に応えることをやってのけた。20打席ほど、人間だっただけだ」と語気を強めた。一方、大谷もワールドシリーズ開幕前にベッツとフリーマンの存在について問われ「チームメートして感銘を受けた。普段のクラブハウスの過ごし方もそう。チームの主力としてすごく助けられた1年だった」と語った。 大谷はワールドシリーズ終了後、フリードマン編成本部長に「あと9回、優勝しよう」。ベッツはパレードの後の祝賀会で、「3つチャンピオンリングを手にした。両手全部の指につけたい」と意欲を示した。勝利のために自己犠牲を厭わないスーパースターの存在は、ドジャースの強さの象徴だった。(阿部太郎)
中日スポーツ