話題のアーティスト、YOSHIROTTENとは何者か? 多様な作品群とこれまでの歩みを徹底解説
作家性を世に知らしめた、2018年の大規模個展
デジタルとアナログ、平面と空間。垣根を超えるヨシロットンのクリエイションは、やがて次のステップへと向かい始める。空間そのものを表現する、現在の作家性を世に知らしめたのが、2018年の初の大規模個展『ヨシロットン エキシビション“フューチャーネイチャー”』だ。約400坪の敷地を持つ印刷製本工場を改装したアートスペースで行われたこの展覧会について、ヨシロットンはこう語る。「ある時期から『自然こそ未来だ』と思うようになったんです。自然は格好よくて、大きくて、色鮮やかで。これに敵うものはないんじゃないか」 18歳で上京して以来、毎日のように都心のクラブに通い、現在も中目黒にスタジオを構えるヨシロットンが立ち返った自然というルーツ。しかし、その見せ方には都市生活者のスタイルが活かされていた。「自然の凄さをほっこり見せるのではなく、とんがった新しい表現をしたい。だから“フューチャー”という言葉を付けました」。本展は大きな反響を呼び、アーティストとしてのヨシロットンを確立させたばかりか、クライアントワークの規模を広げ、その表現方法も広がった。
ラグジュアリーブランドや、著名アーティストとのコラボ
エルメスが展開した表参道でのポップアップイベント「ラジオエルメス」は、ヨシロットンの新次元を代表する仕事のひとつだ。架空のラジオ局をイメージした空間デザインから、ブランドの伝統と革新をモダンかつポップな要素と融合させたロゴデザイン、表参道駅をジャックした交通広告までのアートディレクションによって、世界観の構築能力を見せつけた。ラグジュアリーブランドとのコラボレーションという点では、「マクラーレンGT」のプロモーションプロジェクトも見逃せない。車体に日本各地の移り変わる空の色を映り込ませ、クルマの運動性とエレガントなカーデザインを同時に表現。ブランドへの深い理解と敬意、そしてアーティストとしての感性が融合した仕事だ。 コラボ相手は企業にとどまらない。森山大道と蜷川実花という強い記名性を持つふたりの写真家と向き合った作品は、彼のアーティストとしての側面のみならず、クライアントワークの中で数々の写真と向き合ってきたアートディレクターとしての側面の両方がせめぎ合うエキサイティングな成果を生み出した。さらにキャリア初期から続けてきたミュージシャンとの仕事もその領域を広げていく。 山下達郎の名曲「スパークル」のミュージックビデオでは、ヨシロットンらしい未来的かつクールな世界観とカラフルな意匠、自然への憧憬と畏敬をベースに、現代を代表する若きダンサーたちの表現を織り交ぜた。楽曲が持つ本来の魅力、名曲としての風格とノスタルジーを現在、そして未来へとつないでいく視覚的な再解釈を成功させた。同様に、宇多田ヒカル初のベストアルバム『サイエンス フィクション』のアートワークも、後世のリスナーが宇多田の音楽に触れる際の道しるべとなることだろう。