「勝利が全てではない。人として成長を」よき教育者を目指す【広陵野球部の信念】⑤
「『名監督』より『よき教育者』と言われるほうがうれしい」。春夏通算22度甲子園でさい配を振るい、歴代9位の38勝を挙げても、中井哲之監督(61)は教育者としての誇りが強い。「甲子園で勝つのが全てではない。野球を通じて、人としての生き方を教える方が大事」と力を込める。 【写真】選抜高校野球大会への出場に向け、気合を入れる広陵ナイン 主力でも学業成績が悪ければ練習から外す。100人を超える部員は主力、控えに関係なく、分け隔てなく接する。考えを押し付けず、選手だけのミーティングや自主練習を通じ、考える力を養うことを重視。「野球を離れても、一人の立派な人間であるように」との考えが根底にある。 この春、監督となって35年目を迎える。現在はコーチ5人を信頼し、一歩引いた位置からチームを見守る。ただ、緩みを感じれば、自らねじを巻く。ベンチ入り20人が決まった直後の2月14日。「今の練習で日本一になれるんか。取材を受けても『一つ勝って、校歌が歌えたら幸せです』と言っとけ」。刺激的な言葉で選手の自尊心をくすぐるのが中井流だ。 能力の高い選手がそろい、周囲に勝って当たり前と見られる重圧と長年、戦ってきた。「甲子園に出るのは簡単ではない。けど、出場すると周りのみんなが喜んでくれる。それを見るのがうれしい」。今大会32校中、最多27度目の出場となる伝統校。寄せられる期待を力に変え、信頼する教え子と臨む。 =おわり
中国新聞社