「もう姑に耐えられない…」夫の両親との不仲を理由に離婚できる?【弁護士が解説】
夫の親が原因で離婚する前に知っておくべきこと
「夫の親との不仲が原因で離婚したい」を理由に離婚を求めたとき、親権や慰謝料請求はどうなるのでしょうか。夫だけでなく、義両親への慰謝料請求も認められるのかなど、離婚話を進めるときに押さえておきたいポイントについて解説します。 ▽義両親への慰謝料請求はできる? 離婚の際の慰謝料は、どちらかに不法行為があった場合、精神的苦痛に対する損害賠償として支払われます。例えば、相手の不倫が理由で離婚する場合、「平穏な夫婦生活を送る権利を侵害された」などとして慰謝料を請求できることがあります。 夫の両親との不仲が原因で離婚する場合、「夫が両親と妻の不仲を知りながら放置したのが原因で、夫婦関係が破綻した」と判断されると、慰謝料の請求が認められる可能性があります。上記の昭和43年の名古屋地裁岡崎支部の判決では、夫は家庭内の不和を解消する努力をせず、誠意ある態度が見られなかったなどとして、慰謝料の支払いなどを命じました。 ただし、この事案で妻は夫の両親に対しても慰謝料請求をしていましたが、裁判では義両親との不和は一般的によくあることだとし、「双方の人間性に由来する宿命のようなもので、いずれかの側にのみ責任があるわけではない」などとして義両親への請求は認められませんでした。義両親への慰謝料請求は、夫に対する請求に比べハードルが高いと言えます。 これは、夫婦間には協力義務、すなわち夫婦が共に生活を営むために必要な精神的・事実的な援助を互いに行う義務がある一方で、義両親との間にはそのような法的な協力義務が存在しないことの裏返しとも言えます。 ▽親権と養育費でもめる可能性がある 離婚する夫婦に子供がいる場合、子供の親権も大きな問題です。どちらも親権を望んだ場合、離婚協議や調停、裁判の中で「どちらが親権者にふさわしいのか」を争うことになります。子供への虐待などの特別な事情がない限り、父親と母親のどちらかが有利ということはありません。最終的に裁判所の判断に委ねられた場合、裁判所は次のような観点から検討します。 ・これまでどちらが主に子育てを担ってきたか ・子供が、授乳など母親を必要とする年齢かどうか ・子供自身の気持はどうか ・親が健康で子供を育てられるかどうか ・離婚した後の生活環境が子供にとって望ましいものか こうした観点で判断すれば、子供が乳幼児の場合は、結果的に母親のほうが親権を取りやすいともいえます。しかし、母親の言動や経済的事情によっては、父親が親権を取ることもあります。 離婚の結果、親権が相手に渡った場合は、離婚の理由を問わず、子供が経済的に自立するまで養育費を支払う必要があります。養育費の額は、裁判所が公表している「養育費算定基準表」で、おおよその相場が決まっています。具体的な養育費の額は基準表に基づき、夫婦の年収や子供の数、年齢などで決められます。離婚理由によって金額が増減することはありません。