この長野の郷土料理、まさかの激辛!開店前から並ぶ名店で「おしぼりうどん」を実食
そして待つこと数分で着丼。見た目はとってもシンプルで、強烈なインパクトがあるわけでもない。だが、プーンと香る辛味大根の匂いが、その辛さをしっかりと主張してくる。 「おしぼり」を箸の先につけて舐めてみると……。ん? 大根の甘みを感じるぞと思った次の瞬間、鼻の奥に突き刺さる強烈の辛さが! 「い、い、痛い……」。ペヤングの「獄激辛やきそば」を食べたときの辛さとはまったく違うアプローチで、思わず声が出てしまった。 だが、ここであきらめるわけにはいかない。2口3口食べ進めると、だんだんと口の中が麻痺してきて、辛味大根の旨味と甘みが感じられるようになった。 このつけ汁と合わせるうどんも、あえて塩を加えず打った自家製手打ち麺で、噛みごたえも十分。コシもかなり強く、「ラーメン二郎」の麺を彷彿させるそのビジュアルで、しっかりつけ汁をリフトアップしてくれる。
大根のつけ汁は、お好みで信州味噌と鰹節、そしてネギを入れて味変することもできる。信州味噌の柔らかなコクと鰹節の風味が大根の辛味を際立たせ、口の中に爽快な刺激が広がってくる。 だが、このうどんの奥深さはそれだけじゃない。辛さの後にやってくるのは、ほのかな甘み。このギャップが食べる人を虜にするのだ。 辛いのが苦手な人やおしぼりうどん初心者は、追加で味噌を足すことも可能。「辛党をもうならせる逸品」と言われるのも納得できる。 実はこのおしぼりうどん、歴史も深い。松尾芭蕉の句にも登場するほど、昔から地元の人々に愛されてきたソウルフードなのだ。 坂城町では、数軒の飲食店でこのおしぼりうどんが味わえる。うどんだけでなく、そばでも楽しめるのだ。地元客も足しげく訪れる人気メニューとなっている。
そばは付け汁に大根汁をお好みで入れていく。
このねずみ大根は、他の県産地大根と比較して、圧倒的な辛みと糖度を持っている。「ねずみ大根」が最も旬な時期は、11月から12月とのこと。その時期には地元の直売所でも並ぶそうだ。 東京から来たという隣のテーブルの人たちが口にした「ワサビは鼻から抜けるけど、ねずみ大根の辛さはずっと口の中に残っている」という言葉の通り、「おしぼりうどん」は清楚な見た目を裏切る味なのだ。 汗をかきながら食べる快感を求めるなら、このおしぼりうどん一択。一度食べれば、その強烈なインパクトは、きっと忘れることができないはずだ。 アントレース=取材・文
OCEANS編集部