女に生まれたからこそ、できた「政治参加」? 昔も今も、世の中を変えるのは単純じゃない⁉【NHK大河『光る君へ』#43】
道長の格闘...理想と現実の乖離
本放送には、道長が実資(秋山竜次)に現在の自分の心境を伝えるシーンがありました。 道長は“民が幸せに暮らせる世を作るための政の実現”を胸に抱きながら、まひろと廃墟で誓ったあの日から地に足をつけ、懸命に走ってきました。とはいえ、「左大臣になって20年思いのままの政などしたことはない」という言葉にあるように、道長は左大臣の地位にのぼりつめても自分が思う政ができていないことに視聴者も気づいているはずです。また、実資が「そもそも 左大臣殿に民の顔なぞ 見えておられるのか?」と問い詰めたように、道長の周囲を巻き込んできた行動は自分が実権を握るための施策ばかりで、自らの保身が目立ち、彼の真の意図が周囲に伝わるようなものではなかったと思います。民の声に耳を傾けるようにと上に伝えたり、都で疫病が流行った時期には病に苦しむ民のための施設を自分の資産で営むことを検討したりしていたものの、道長が民のために成し遂げた大きな功績は今のところほとんど思い浮かばないのは筆者だけではないはずです。 ただし、忘れてはならないのは、まひろの活躍は道長の努力や奔走があってこそということ。まひろが自分の生まれてきた意味を見つけられたのもソウルメイトである道長の存在があるからであり、まひろひとりでは光る君への物語は生まれませんでしたし、中宮に近づくことはできませんでした。また、道長とまひろが内裏に入ったことで、新鮮な風がわずかだが吹いたように思います。 本作では、兼家(段田安則)から続く藤原家の独裁政治が描かれているようにも見えますが、政はひとりの権力者のみが動かすものではないことによくよく見てみると気づきます。帝についても政を自由に執り行えるわけではなく、公卿や左大臣から好かれなければ立場は危うくなりますし、自らの計画が周囲から阻止されることは珍しくありません。関白や左大臣の地位にあったとしても、自分の思いどおりにできるわけではなく、むしろ公卿の顔色を窺わなければその地位は危うくなります。
【関連記事】
- ◆つづきを読む◆猫に「貴族」の地位が与えられていた!?一条天皇と宇多天皇は愛猫家で、「それ、わかる~!」なかわいがりっぷり【平安時代のペット
- ◆「老いは誰にでも平等に訪れる」頂点に上り詰めた道長、衰えはじめる彼の力。愛する人がいるから生きられる!?【NHK大河『光る君へ』#42】
- ◆「ボディガードと女性VIPの恋は、やっぱり盛り上がるよね~」母と娘、恋する男性のタイプも似ている⁉ 平安時代「武者」の暮らしとは【NHK大河『光る君へ』#41】
- ◆「王子様を待つだけなんてイヤ!」守られるのではなく、守る立場になりたい!「彰子」は新しいタイプのお姫様!?【NHK大河『光る君へ』#40】
- ◆「もしかして不倫してる?」女の勘に頼って、夫の単身赴任先へ! 自身が「サレ妻」となったとき、不倫解決カウンセラーが出した「最良の選択」とは