菅田将暉の「みぞうゆう」が懐かしすぎる…原作"インスパイア"の不安を見事に払拭したワケ。 ドラマ『民王R』考察レビュー
〝なにげない逸材〟大橋和也
今回もう1人、主要キャストの仲間入りをしているのが大橋和也(なにわ男子)。コネ書生ながらも、朝ご飯の用意をしたり掃除をしたり、かいがいしく働く田中丸を演じている。 意外性で強烈なパンチを決めてきたあのに対し、彼は、素の大阪弁と愛されキャラをそのまま活かしている。そのため「大橋和也のまま」になってもよさそうなものだが、面白いことに、ちゃんと田中丸(「丸ちゃん」)になっている。 この匙加減はなんとも不思議。あまりにもナチュラルに物語の世界に入り、そこにいるたたずまい。また、普通におしゃべりするようにセリフを言う自然さは、何気に逸材ではないかと思っている。 周りを盛り立てる温かさ、やわらかさは、狩屋を演じる金田明夫と魅力的に通じるところがあり、この子弟コンビのやりとりは、今後も楽しみだ。 そのほか、公安の新人、頭は切れるがメンタルが弱い猫田(山時聡真)もいい味を出している。今回は引退前の60代半ばの政治家、泰山を、価値観が全く違うZ世代がどうサポートし、どう刺激をし合うのかが見どころの1つともいえる。
政治に対する皮肉のキレの良さは健在
前作の『民王』も政治への皮肉をバッシバシ入れていたが、今回もそのキレの良さは変わらない。そもそも、9年前『民王』最終回であれだけの決意を持って総理大臣に返り咲いたにもかかわらず、泰山はパッとせず、結局二木(岸部一徳)のイエスマンに成り下がっている。これもまたリアル。 彼が所属する民政党の内閣支持率は5%。次の総理大臣の候補6人は「失言・裏金・失言・裏金・女・失言と裏金と女」で脱落。重要なポジションは「爺さんの会合で全てが決まる」…なかなか強烈である。 小泉進次郎にそっくりな、溝端淳平が演じる政界のプリンス、白鳥翼がどう描かれるのか、今後も注目だ。
遠藤憲一の七変化に期待
今後は、1話完結で「入れ替わりさん」として、彼と全くかかわりのない、何らかの事情を抱えた国民が入れ替わる展開になるようだ。 総理大臣が弱者の立場にたち、そのつらさを身をもって知り、解決策を考え飛び回る。そしてそれが、政策に還元される――。私たちが政治に求める、そんな理想的な流れを、ドラマで可視化するという大挑戦。 一般の視聴者はもちろん、政治家たちが、このドラマから何を感じるのか、興味深くもある。なんらかの疑似体験ができるのではないか。 これから何話あるのかはわからないが、演じる遠藤憲一の入れ替わり演技もおおいに楽しみ。第1話も、あのちゃん独特のタ行、ナ行、ラ行の発音を駆使し、本当にかわいかった。しかしこれをあと複数人するわけだ。 ご本人は大変だろうなと思っていたら、本当に大変なようで、 「毎回毎回、子どもや若者、おばあちゃんなど、まったく違う属性の人と入れ替わってるので、本当に、俺の役者人生で今がいちばん大変なんじゃないか? っていうくらい」(文春オンライン 10月22日配信) と語っていた。こここ子どもやおばあちゃん!? どんなゲストが出るのか楽しみ過ぎる…。 第2話の〝入れ替わりさん〟は、闇バイトの青年。いきなり、ハードルが高い。どんな対策に打って出るのか。 武藤泰山に、乗り越えられぬ山はなーいッ!! ……と信じたい。 【著者プロフィール:田中稲】 ライター。アイドル、昭和歌謡、JPOP、ドラマ、世代研究を中心に執筆。著書に『そろそろ日本の全世代についてまとめておこうか。』(青月社)『昭和歌謡出る単 1008語』(誠文堂新光社)がある。CREA WEBにて「田中稲の勝手に再ブーム」を連載中。「文春オンライン」「8760bypostseven」「東洋経済オンライン」ほかネットメディアへの寄稿多数。
田中稲