「電話恐怖症」の背後にある“社交的不安”の正体 2015年頃から顕著になった「会社をやめる理由」
このように電話恐怖症が社会問題化しているのは、日本だけでなく、世界各国共通の問題のようです。インターネットを中心にしたコミュニケーションの変化が、電話恐怖症という現象につながっているのかもしれません。 ■「電話恐怖症」とは何か 「電話恐怖症(テレフォビア)」という正式な病名はまだありません。病名ではなく、状態とか傾向と理解していただければいいでしょう。 ではその状態はどういうものかというと、電話に出ることやかけることに嫌悪感や不安感があり、心身に症状があらわれるものをいいます。
身体症状としては、手に汗をかいたり、動悸や息切れが激しくなったり、吐き気がする、口が乾く、震えが出るなどがあります。心理的な症状では、不安になったり、焦り、恐怖心がつのったりするといったことがあげられます。 それが病的であるかどうかは、社会生活がスムーズに行えるかどうかで判断します。 それこそ会社をやめなければならないとか、家から出られないほどのものだと、病的な部類に入ると思います。 先のBBC Science Focusの記事では、アメリカで何らかの社交不安を抱える人が1500万人くらいいるともあったように、電話恐怖症も社交不安のひとつでしょう。
電話恐怖症も含めて、病的な社交不安を持つ人は他人からネガティブな評価を受けたり、批判されたりするのを極度におそれる特徴があります。 そのため、人と対面したときに緊張してうまく話せなくなり、その失敗がまた起きるのではないかと不安になります。するとまだ不安が起きる前から、原因となる対人関係や社会的な場面を回避するようになるのです。この図式を電話恐怖症に当てはめるとこうなります。 電話をかけたり受けたりしたときに、緊張し、不安になる
↓ うまくいかない応対が相手にどう思われるか また、周りからどう評価されるかを気にする ↓ 自己嫌悪におちいる。場合によっては周りから指摘を受ける ↓ また同じことが起きるのではないかという予期不安が起きる ↓ 電話をかけたり、受けたりする場面から逃げようとする このように、電話恐怖症の後ろには、人からどう見えるかを気にする社交的な不安があります。 よって、単なる電話というツール自体の苦手意識だけではないということがおわかりになると思います。この不安を払拭していくことが、社会生活を行ううえでのコミュニケーション、ひいては電話応答のスキルアップにつながっていきます。
大野 萌子 :日本メンタルアップ支援機構 代表理事