「電話恐怖症」の背後にある“社交的不安”の正体 2015年頃から顕著になった「会社をやめる理由」
2015年以前ですと、「店員さんに言って、注文通りのコーヒーに替えてもらう」という人が7~8割でした。しかし最近では、「替えてもらう」のは5割弱。つまり半数以上の人は「黙ってそのまま紅茶を飲む」というのです。 コーヒーが飲みたかったのに紅茶が出てきたとき、なぜ「替えてください」というひと言が言えないのでしょうか。 その理由について聞いてみると、以前は「面倒くさい」とか「まあいいやと思うから」という答えが多かったのですが、最近は「何と言えばいいかわからないから」「どう思われるか心配」「言うタイミングがつかめない」などの回答が多くを占めるようになりました。
つまり人とどうかかわるのか、コミュニケーションの問題が浮上してきているのです。もし日本人が近年コミュニケーション下手になってきているとしたら、電話で話すのがこわくなるのは当たり前といえるでしょう。電話恐怖症は日本人のコミュニケーション力の低下と密接に関係しているのです。 ■アメリカでは約8割の若者が電話に不安感 電話恐怖症の問題は日本だけではありません。イギリスの大手電話応対サービス会社Face For Businessが2019年に公開した記事によると、オフィス勤務の従業員のうち62%が、電話に出る前に不安を感じると答えています。
不安の内容は「質問にどう対処すればいいかわからない不安」が33%、「電話でフリーズすることへの不安」が15%、「相手が否定的に考えるかもしれない」が9%などです。 またこの調査では、ミレニアル世代(1981年~1996年生まれ)がもっとも電話不安が高く、76%が電話の着信音を聞いたとき、不安になると答えています。同じ質問を団塊世代(1947年~1949年生まれ)に聞くと40%ですから、電話に不安を感じるのは、若い世代では団塊世代の倍近くになることがわかります。
また2023年にBBC Science Focusで公開された記事によると、22歳から37歳を対象にしたアメリカの調査では、約8割が電話で話すことに不安を感じています。 興味深いことにZ世代(1990年代半ば~2010年代初めごろの生まれ)になると、電話を無視する傾向が強くなります。そのためこの世代を「ミュート世代」と呼ぶこともあるそうです。 同様に、韓国の研究団体エンブレインが2022年に行った調査では、電話をかける前に精神的なプレッシャーを感じている人は、20代がもっとも高く43.6%、ついで30代36.4%、40代は29.2%、50代はわずか19.6%でした。 韓国のイム・ミョンホ心理学教授は、若者たちの間で、電話恐怖症として知られる電話不安がますます強まっていると語っています。