ROGUEギタリスト香川誠が語る、当時「終わりのない歌」に感じた強い違和感
音楽的に成長する時期のアルバム
OVER STEP / ROGUE 田家:これは詞曲が香川さんで、Disc2に入っております。 香川:かっこいいじゃないですか。 田家:かっこいいですね。 香川:僕はそこだけなんですよ(笑)。 田家:ははは! これアレンジというのはバンドでやったんですか? 香川:バンドですね。変拍子を1拍かけてるというのは、普通にやっていたんですけど、なんかもうお客さんがただ踊るのを外したかっただけです。1拍なくしてやれぐらいです。 田家:なんで外してやれだったんですか? 香川:ロック・バンドでそれこそ、じゃあツェッペリンのロックンロールでもそうですけど、頭どこなんだよとか、そういうギミックに引っかかってるじゃないですか、僕らたくさん。 田家:これは話し合いながらそういう形にしていくんですか? 香川:いや、たぶん僕の曲は自宅でラジカセでカセット・テープを回して、コードも繋いでないギターでただ歌っているだけですから。こんな曲ですっていうのをそのままスタジオに行って、そうすると竜さんが普通に2バスを叩いてくれて、西山がベースを弾いてくれてという作り方だったので、ほとんど。 田家:西山さんの話は来週いろいろお訊きしようと思うのですが、これはライブの代表曲になりましたもんね。1988年のツアータイトルも「OVER STEP」だった。 香川:これは今やっても燃える曲ですよね。 小夜曲 (SERENADE) / ROGUE 田家:ROGUE初めてのオールタイムセレクション、『60 ALL TIME SELECTION』、Disc2、香川さんの曲が並んでいるDisc2の最後の曲。漢字で小夜曲と書いて「SERENADE」。これは詞が奥野さんで曲が香川さん。 香川:結果、詞が奥野になっただけで、奥野が歌う前にガクロウっていうのがROGUEに入って、歌を歌っている時期があって、その頃に僕が作った曲なんですけど、なんとなく歌詞を書いてガクロウが歌うという、ちょっとなんか書いてよってところからスタートだったんですよ。で、奥野が歌うようになって、奥野も加筆修正みたいなのを重ねて。たぶん僕、そのくらいの頃から歌い手は歌いたい歌詞を書くっていうのが、ある意味正解なんだというのに気がついたような曲ですよね。 田家:このDisc2はアルバム『SERENADE』の中の曲の誕生日と書いてHAPPY BIRTHDAYと、このSERENADEが2曲続いているでしょう。アルバムでは曲繋ぎみたいな形。 香川:ぴったり繋げようって。「HAPPY BIRTHDAY」のエンディングも、ビートルズのあの曲みたいにやりたいと、そういう欲が音楽っぽくなって。 田家:『アビー・ロード』のB面みたいに繋げたいと。 香川:そうそう、とか、そんなふうに思い出しますね。 田家:そういう意味では変化がかなり早かった。 香川:音楽的に成長する時期のアルバムなんですよ。インディーの最後のさっきの『恋のバカンス』のシングルから後にBUCK-TICKとかあのへんをやる、比留間っていうエンジニアが一緒なんですよね。比留間がまたおもしろいやつで、どんどん実験するんですよ。作業のとき。なので、一番おもしろい時期かもしれない。 静かな伝説 / 竹内まりや 流れているのはこの番組の後テーマ、竹内まりやさんがの「静かな伝説」です。 先々月、周年アーティストのデビュー・アルバムという特集を組みました。40周年、50周年という人たちがたくさん出てくる中で還暦ということのある種のリアリティみたいなものが薄れているなという気分もあったのですが、でも考えてみたらROGUEと同じ群馬出身のBUCK-TICKの櫻井敦司さんとか、ミッシェル・ガン・エレファント、The Birthdayのチバユウスケさんが50代で亡くなってしまったりしているわけで、あらためてロック・バンドにとって還暦というのは、単に何年経ちましたってことと違う重みがあるんだなと思ったりもしていたんですね。 そういう中でこのオールタイムセレクション・アルバムを聴いていて、やっぱり初期と後半、特に再結成以降、奥野さんが半身不随になっているということを踏まえてこの60曲を聴いていると、全然違うストーリーがあるんだなと思いました。ほとんど指も動かない、下半身が全く動かない、感覚すらないという車椅子のヴォーカリストがこんなふうに再結成アルバムを出して、それとデビュー前からのものと繋がったものとして聴ける。こういうヒューマン・ドラマのアルバムと言うんでしょうか。こういう還暦アルバムはとても貴重だなということで、あらためてこんな特集を組んでみました。 誰もが年を取るわけで、無事に重ねられるわけでもないわけで、途中思いもない出来事があって、そこから先違う人生をまた歩かなければいけない。それをロック・バンドが形を変えずに今のままのスタイルで続けているということの重みをあらためて知っていただけたらと思う、そんな2週間であります。来週はそのアルバムの続きをお送りしようと思います。 <INFORMATION> 田家秀樹 1946年、千葉県船橋市生まれ。中央大法学部政治学科卒。1969年、タウン誌のはしりとなった「新宿プレイマップ」創刊編集者を皮切りに、「セイ!ヤング」などの放送作家、若者雑誌編集長を経て音楽評論家、ノンフィクション作家、放送作家、音楽番組パーソリナリテイとして活躍中。 「J-POP LEGEND CAFE」 月 21:00-22:00 音楽評論家・田家秀樹が日本の音楽の礎となったアーティストにスポットを当て、本人や当時の関係者から深く掘り下げた話を引き出す1時間。 OFFICIAL WEBSITE : OFFICIAL Twitter :@fmcocolo765 OFFICIAL Facebook : @FMCOCOLO radikoなら、パソコン・スマートフォンでFM COCOLOが無料でクリアに聴けます! →
Rolling Stone Japan 編集部